環境用語「ガス・バイ・ガス」の意味と削減方法

先生、環境に関する用語『ガス・バイ・ガス』について教えてください。

地球環境の専門家
ガス・バイ・ガスとは、温室効果ガスの種類ごとに削減目標を定めて排出を規制する方式のことだよ。

なるほど、温室効果ガスごとに目標を決めて削減していくのですね。

地球環境の専門家
そうだよ。この方式は、温室効果ガスの種類によって排出削減の難易度やコストが異なることを考慮して、効率的に削減を進められるんだ。
ガス・バイ・ガスとは。
「温室効果ガスごとに削減目標を設定して排出を規制する方式を『ガス・バイ・ガス』といいます。」
ガス・バイ・ガスの意味を解説

ガス・バイ・ガス(gas-by-gas approach)とは、地球温暖化対策において、複数の温室効果ガスを一括して扱うのではなく、ガスの種類ごとに個別に削減目標を設定し、排出規制を行う方式のことです。対義的な考え方として、すべての温室効果ガスをCO2換算で合算して扱う「バスケット方式(comprehensive approach)」があります。
温室効果ガスにはそれぞれ温暖化への寄与度(地球温暖化係数:GWP)や排出源、削減コスト、削減技術が大きく異なるという特徴があります。ガス・バイ・ガス方式は、こうしたガスごとの性質の違いを踏まえて、それぞれに適した削減策を講じることを目的としています。
京都議定書の交渉過程では、ガス・バイ・ガス方式とバスケット方式のいずれを採用するかが議論となり、最終的には6種類の温室効果ガスを対象とするバスケット方式が採用されました。一方で、ガスごとの特性に応じたきめ細かな政策立案の観点から、ガス・バイ・ガスの考え方は今なお重要な意義を持っています。
ガス・バイ・ガスの種類と削減目標

ガス・バイ・ガス方式で個別に管理される代表的な温室効果ガスは、京都議定書で定められた以下の6種類です。すなわち、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)です。なお、2013年以降の第二約束期間からは三フッ化窒素(NF3)も追加されています。これらは、化石燃料の燃焼、工業プロセス、農業活動、廃棄物処理などから排出され、地球温暖化の主要因となっています。
2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが目標とされました。日本は、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目標として掲げ、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとしています。
ガス・バイ・ガスの考え方に基づく削減策としては、CO2については再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進、CH4については家畜の消化管内発酵や水田からの排出削減、廃棄物埋立地でのメタン回収、N2Oについては施肥管理の最適化、HFCs・PFCs・SF6については代替物質への転換や使用量削減、回収・破壊などが挙げられます。
ガス・バイ・ガスの排出規制方法

ガス・バイ・ガス方式では、温室効果ガスの種類ごとに排出量を把握・管理し、それぞれに適した規制手段を講じます。代表的な政策手段としては、排出量の上限を設定したうえで排出枠の取引を認めるキャップ・アンド・トレード方式や、排出量に応じて課税する炭素税などがあります。
キャップ・アンド・トレード方式は、対象となる事業者全体に排出量の上限(キャップ)を設定し、各事業者に排出枠を割り当てたうえで、余剰や不足分を市場で取引(トレード)できる仕組みです。これにより、社会全体として削減コストの低い分野から優先的に削減が進む効果が期待されます。EUのEU-ETSが代表例です。
炭素税は、化石燃料の使用などに伴う炭素排出量に応じて課税する仕組みで、価格メカニズムを通じて排出削減を促進します。日本でも2012年から「地球温暖化対策のための税」が導入されています。
これらの規制手段をガスごとの特性に応じて組み合わせることが、効率的な温室効果ガス削減につながります。
ガス・バイ・ガスの削減に向けてできること

ガス・バイ・ガスのアプローチでは、各温室効果ガスの排出源や削減技術が異なるため、ガスごとに適した削減策を講じることが重要です。
具体的には、次のような対策が挙げられます。
- 二酸化炭素(CO2):エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの導入拡大、電動車への転換、住宅・建築物の断熱性能向上など
- メタン(CH4):畜産分野での飼料改善や排せつ物管理、水田の中干し延長、天然ガス・石油設備からの漏洩防止、廃棄物埋立地でのガス回収など
- 一酸化二窒素(N2O):施肥の適正化、農業排水の管理、工業プロセスからの排出抑制など
- フロン類(HFCs等):低GWP冷媒・自然冷媒への転換、機器使用時の漏洩防止、廃棄時の確実な回収・破壊など
ガス・バイ・ガスの考え方は、地球温暖化を効果的に抑制するうえで重要な視点を提供します。各ガスの排出量を個別に把握・分析することで、より効率的かつ実効性のある削減対策の立案が可能となります。
ガス・バイ・ガスの将来展望

気候変動対策が世界的に強化される中、ガス・バイ・ガスの考え方は今後ますます重要性を増すと考えられます。特に、CO2以外の温室効果ガス(非CO2ガス)への対策が国際的に注目されており、メタン排出量を2030年までに2020年比で30%削減することを目指すグローバル・メタン・プレッジが2021年のCOP26で発足するなど、ガス別の国際的取り組みも進展しています。
企業や組織においても、自らの事業活動やサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量をガスごとに測定・開示し、削減する動きが広がっています。エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの活用、輸送手段の見直し、フロン類の管理徹底などを通じて、ガスごとに最適な削減策を講じることが求められています。
企業・組織における削減の進め方は、一般的に次の4つのステップで構成されます。
- 温室効果ガス排出量のガス別測定と報告
- ガスごとの削減目標の設定
- ガスごとの削減計画の策定
- 削減計画の実施とモニタリング
ガス・バイ・ガスのアプローチは、カーボンニュートラルの実現に向けて、科学的根拠に基づくきめ細かな政策・実務対応を支える重要な枠組みとして、今後も発展していくことが期待されます。


