国連が推進するフォーパーミル・イニシアチブとは?

先生、フォーパーミル・イニシアチブについて教えてください。

地球環境の専門家
フォーパーミル・イニシアチブとは、世界の土壌中の炭素貯留量を毎年1000分の4(4‰)ずつ増やすことで、大気中のCO2の増加を実質的に相殺しようとする国際的な取り組みです。

なるほど、土壌に炭素を貯留することで、大気中のCO2の増加を抑えることができるということですね。

地球環境の専門家
その通りです。フォーパーミル・イニシアチブは、2015年にパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、フランスが提案して始まりました。現在では、日本を含む多数の国や国際機関が参画しています。
フォーパーミル・イニシアチブとは。
「フォーパーミル・イニシアチブ」とは、土壌に炭素を貯留することによって気候変動対策に貢献しようとする国際的な取り組みです。「フォーパーミル」とは1000分の4(4‰)を意味し、世界の土壌中に存在する炭素量を毎年4/1000ずつ増やすことができれば、人間活動によって排出される大気中のCO2の増加量を実質的に相殺できるとの試算に基づいています。このイニシアチブは、2015年にパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でフランスが提案して始まり、多数の国・国際機関・自治体・研究機関等が参画しています。日本の都道府県では山梨県が初めて参加しました。
フォーパーミル・イニシアチブの背景

フォーパーミル・イニシアチブが生まれた背景には、気候変動対策の喫緊性と、土壌が持つ炭素貯留機能への注目があります。世界の土壌は、大気や植生よりもはるかに多くの炭素を蓄えており、農地や草地、森林の管理方法を改善することで、土壌中の有機炭素を増やすことが可能だと考えられています。
2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが合意されました。この目標達成には、温室効果ガスの排出削減だけでなく、大気中のCO2を吸収・貯留する取り組みが不可欠です。
こうした流れの中で、フランス政府はCOP21において、農業と土壌を気候変動対策の主要な解決策の一つとして位置づける「4‰イニシアチブ(フォーパーミル・イニシアチブ)」を提唱しました。これは、農業を「気候変動の原因」から「気候変動の解決策」へと転換させるという発想に基づいています。同時に、土壌の有機炭素を増やすことは、土壌の肥沃度を高め、食料安全保障や持続可能な農業にも寄与するという複合的な意義を持っています。
フォーパーミル・イニシアチブの目的と目標

フォーパーミル・イニシアチブの目的は、土壌炭素貯留を促進することにより、気候変動の緩和と食料安全保障の双方に貢献することです。具体的には、世界の土壌(特に農地土壌)の炭素量を毎年1000分の4(4‰)ずつ増加させることを目標としています。
このイニシアチブが掲げる主な目標は次のとおりです。
- 気候変動の緩和:土壌に炭素を貯留することで、大気中のCO2濃度の上昇を抑制する。
- 食料安全保障の強化:土壌中の有機物を増やすことで、土壌の肥沃度や保水性を改善し、農業生産性を高める。
- 持続可能な農業への転換:不耕起栽培、被覆作物、輪作、堆肥施用、アグロフォレストリー(森林農業)など、土壌の炭素貯留を促進する農業手法を世界に普及する。
- 研究と知見の共有:土壌炭素貯留に関する科学的知見、政策、実践事例を国際的に共有し、各国の取り組みを支援する。
このイニシアチブは、政府、研究機関、農業者、民間セクター、市民社会など、多様なステークホルダーが連携して取り組むことを重視しており、各国・各地域の気候や土壌条件に応じた柔軟な実践が推奨されています。
フォーパーミル・イニシアチブの具体的な取り組み

フォーパーミル・イニシアチブでは、土壌炭素を増加させるための農業・土地管理の実践が世界各地で進められています。これらは、農業生産を維持・向上させながら、温室効果ガスの吸収・貯留を実現することを目指したものです。
具体的な取り組みとしては、次のような農業・土地管理手法が推奨されています。
- 堆肥や有機物の施用:家畜糞尿や作物残渣などの有機物を農地に投入することで、土壌中の有機炭素を増加させる。
- 被覆作物(カバークロップ)の導入:休閑期に作物を栽培して土壌を裸地にせず、有機物の供給と土壌侵食の防止を図る。
- 不耕起・省耕起栽培:耕起を減らすことで、土壌中に蓄積された炭素の分解を抑制する。
- アグロフォレストリー:農地に樹木を組み合わせて栽培することで、地上部・地下部ともに炭素を貯留する。
- 草地・放牧地の管理改善:適切な放牧管理や植生回復によって、草地土壌の炭素貯留量を増やす。
- 劣化土壌の修復:荒廃地や塩類化した土壌を回復させ、再び炭素を貯留できる状態に戻す。
これらの取り組みに加えて、参画国・地域では、土壌炭素のモニタリング手法の開発、農業者への技術普及、政策的・経済的インセンティブの整備なども進められています。
フォーパーミル・イニシアチブの課題と展望

フォーパーミル・イニシアチブは、気候変動対策と食料安全保障を同時に実現する有望なアプローチとして期待されている一方で、いくつかの課題にも直面しています。
第一に、土壌炭素の測定・モニタリングの難しさがあります。土壌炭素は地域や深度によって大きく異なり、変化を正確に把握するには長期にわたる継続的な測定が必要です。標準化された測定手法と低コストでの評価技術の確立が求められています。
第二に、炭素貯留の永続性の問題です。土壌に蓄えられた炭素は、耕起や気候条件の変化、土地利用の転換によって再び大気中に放出される可能性があり、貯留の安定性をどう確保するかが課題となっています。
第三に、農業者へのインセンティブの確保です。土壌炭素を増やす農業手法への転換にはコストや労力がかかるため、政策的支援や経済的インセンティブ(カーボンクレジットの活用など)が不可欠です。
こうした課題はあるものの、本イニシアチブは多くの希望をもたらしています。世界各地で実証研究や政策連携が進み、持続可能な農業と気候変動対策を同時に達成する道筋が示されつつあります。今後、各国・自治体・研究機関・民間セクターが連携を深め、科学的知見と実践を蓄積していくことで、フォーパーミル・イニシアチブは気候中立社会の実現に向けて重要な役割を果たすと期待されています。
フォーパーミル・イニシアチブへの日本の取り組み

日本もフォーパーミル・イニシアチブに参画しており、国および自治体レベルで土壌炭素貯留に向けた取り組みを進めています。特に山梨県は、2020年に日本の都道府県として初めてこのイニシアチブに参画し、剪定枝の堆肥化や果樹園での土壌管理を通じた炭素貯留に取り組んでいます。
日本における主な取り組みは、次のような分野に重点が置かれています。
- 持続可能な農業の推進:堆肥や緑肥の活用、有機農業の拡大、減化学肥料・減農薬の取り組みを通じて、土壌の有機物を増やし、土壌や水質の保全に努めています。
- 果樹園・農地での炭素貯留:剪定枝や作物残渣を堆肥化して農地に還元することで、土壌炭素の増加と廃棄物の削減を同時に実現する取り組みが行われています。
- 森林の保護と持続可能な管理:森林の適切な管理・保全を通じて、気候変動対策や生物多様性の保全に貢献しています。
- 研究・モニタリング体制の整備:農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)などの研究機関が、土壌炭素の測定・評価手法の開発や実証研究を進めています。
これらの取り組みを通じて、日本は地域の気候・土壌特性に応じた土壌炭素貯留の実践モデルを構築し、国際社会への貢献を進めています。


