バード決議とは?京都議定書の批准を阻止した米国の決議

先生、『バード決議』ってどういう意味ですか?

地球環境の専門家
『バード決議』は、京都議定書のような温室効果ガスの排出を削減する国際合意について、主要な途上国に同様の削減義務が課されない場合や、米国経済に深刻な悪影響を与える場合は批准すべきではない、と表明した米国上院の決議のことだよ。この決議によって、京都議定書の米国による批准は事実上不可能になったんだ。

なぜアメリカは京都議定書を批准しなかったんですか?

地球環境の専門家
アメリカは、京都議定書が自国の経済に悪影響を与えると考えていたんだ。また、中国やインドといった主要な途上国に削減義務が課されない不公平な枠組みであるとして、参加すべきではないと判断したんだよ。
バード決議とは。
「バード決議」とは、主要な途上国が有意義に参加しない場合、または米国経済に深刻な悪影響を与える場合には、京都議定書のような気候変動に関する議定書を批准すべきでないとした、米国上院で可決された決議です。
バード決議とは?

バード決議(Byrd-Hagel Resolution)とは、1997年7月25日に米国上院で全会一致(95対0)で可決された決議(上院決議第98号)です。京都議定書の採択(1997年12月)に先立って成立したこの決議は、ロバート・バード上院議員(民主党、ウェストバージニア州)とチャック・ヘーゲル上院議員(共和党、ネブラスカ州)によって共同提案されました。
決議の主な内容は、「主要な途上国に対しても同一の遵守期間内で温室効果ガス排出を制限・削減する義務が課されない限り、米国経済に深刻な悪影響を与えるような議定書には署名すべきでない」とするものでした。米国憲法上、条約の批准には上院の3分の2以上の賛成が必要なため、この決議は京都議定書の批准を事実上不可能にし、国際社会の気候変動対策に大きな影響を与えました。
バード決議の背景

1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」で採択された気候変動枠組条約(UNFCCC)は、地球温暖化対策の国際的な枠組みを定めた条約です。京都議定書は、この条約に基づき1997年12月に京都で開催されたCOP3で採択された議定書で、2008年から2012年までの第一約束期間において、先進国に対して温室効果ガス排出量の削減目標を法的拘束力のある形で義務付けました。
一方、議定書では中国やインドなどの途上国には削減義務が課されませんでした。米国議会では、こうした「先進国のみに義務を課す枠組み」が米国産業の国際競争力を損ない、雇用や経済に悪影響を与えるとの懸念が広がっていました。こうした懸念を背景に、京都議定書の交渉に先立つ1997年7月、バード議員とヘーゲル議員によってバード決議が提案され、上院で95対0の圧倒的多数で可決されました。
その後、クリントン政権は1998年に京都議定書に署名したものの、上院での批准の見通しが立たず、議定書を上院に送付しませんでした。さらに2001年に発足したジョージ・W・ブッシュ政権は、議定書を支持しない方針を表明し、米国は京都議定書の枠組みから離脱することとなりました。
バード決議の影響

バード決議は、国際社会に大きな影響を及ぼしました。当時世界最大の温室効果ガス排出国であった米国が京都議定書を批准しなかったことで、世界全体での排出削減の取り組みは大きく後退し、議定書の実効性も弱まりました。米国の不参加は、他の主要排出国の行動にも少なからず影響を与えたとされています。
また、バード決議とそれに続くブッシュ政権の方針転換は、米国の気候変動政策に対する国際的な不信感を高め、欧州諸国などとの外交関係にも影響を与えました。米国国内でも、環境保護団体などから強い批判が寄せられました。
近年、気候変動の影響が深刻化し、世界各国で温室効果ガスの削減に向けた取り組みが加速していますが、バード決議が示した「途上国にも実効的な義務を」という米国の立場は、その後の国際交渉にも影響を与え続けています。
バード決議と京都議定書

バード決議は、京都議定書交渉の大詰めを迎えた1997年7月、京都での採択(同年12月)に先立って米国上院で可決されました。途上国に対しても同等の削減義務が課されない限り、また米国経済に深刻な悪影響を与えるような枠組みには、米国は署名・批准すべきでないという上院の意思を示すものであり、政権の交渉姿勢に強い制約を課すものでした。
京都議定書は先進国に対して温室効果ガス排出量の法的拘束力を持つ削減目標を課しましたが、米国は1998年に署名したものの、バード決議の存在により上院での批准は不可能と判断され、結局批准されませんでした。これにより米国は議定書上の削減義務を負わず、議定書全体の実効性も大きく損なわれることとなりました。
バード決議は、気候変動対策の観点から批判される一方、すべての主要排出国の参加が不可欠であるという、後のパリ協定に通じる視点を先取りしたものとも評価されています。
バード決議のその後

京都議定書は、ロシアの批准を経て2005年2月に発効しました。米国は批准しなかったため、削減義務を負わない唯一の主要先進国となりました。
米国の温室効果ガス排出量はその後も高水準で推移し、長く世界最大の排出国でしたが、2000年代後半以降は中国が世界最大の排出国となっています。
2015年には、すべての締約国が排出削減に取り組む新たな枠組みとしてパリ協定が採択されました。バード決議が求めていた「途上国を含むすべての主要排出国の参加」という条件は、パリ協定によって一定程度満たされたといえます。
しかし、米国は2017年にトランプ政権がパリ協定からの離脱を表明し、2020年に正式に離脱しました。トランプ政権は、パリ協定を「米国経済を損なう不公平な協定である」と主張しましたが、気候変動の専門家からは、米国の離脱が世界全体の排出削減努力を後退させると懸念が示されました。
2021年に発足したバイデン政権はパリ協定に復帰し、温室効果ガス排出量の削減を強化する方針を打ち出しました。米国の排出削減には、再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの推進、森林保護の強化などが必要であり、2022年に成立したインフレ削減法(IRA)など、気候変動対策への大規模な投資が進められています。


