マングローブの生態系を守るためにできること

マングローブについて教えてください。

地球環境の専門家
マングローブとは、熱帯・亜熱帯の潮の満ち引きの影響を受ける沿岸域(潮間帯)に生育する樹木の総称です。特定の一種を指す植物名ではなく、海水と淡水が混じり合う環境に適応した樹種のまとまりを指し、その林はマングローブ林、あるいはマンガルと呼ばれます。

マングローブの特徴を教えてください。

地球環境の専門家
最大の特徴は塩分への強さで、根が海水や汽水に浸かる環境でも生育できます。泥の中は酸素が乏しいため、地上に突き出す根を発達させる種も多く、その複雑な根がカニや稚魚の隠れ場所となって沿岸の生態系を支えています。
マングローブとは。
「マングローブ」とは、熱帯・亜熱帯地方の潮間帯(河口の汽水域や干潟など、潮の満ち引きの影響を受ける沿岸域)に生い茂る樹木の総称です。ヒルギ科をはじめ複数の科にまたがる70~100種程度が知られ、その木々が形成する林は「マングローブ林」、または「マンガル」と呼ばれます。
マングローブ林とは何か

マングローブ林は、世界の熱帯・亜熱帯の海岸線や河口域に広く分布し、陸と海が接する特殊な環境に成立する森林です。潮の干満によって一日に二度、冠水と干出を繰り返す不安定な立地でありながら樹木が密生し、独自の生物多様性を育んでいます。
FAO(国連食糧農業機関)によると、2020年時点の世界のマングローブ面積は1,480万ヘクタールで、2000年からの20年間に67万7,000ヘクタールが失われました。国別で最大の面積を持つのはインドネシアで、一国で世界のおよそ2割を占めています。ただし、その価値への認識が高まり保護区の設定が進んだことで、減少のペースは近年鈍化しており、年間の純減少率は2000〜2020年の0.12%から、2010〜2020年には0.07%まで低下しました。それでも林が失われれば、沿岸地域は高潮や津波などの災害を受けやすくなり、生物多様性も損なわれてしまいます。そのため、マングローブ林を守る取り組みは今なお世界各地で重要な課題となっています。
マングローブの生態系

マングローブを構成するのは、海水や汽水に耐性を持つ樹木や低木です。日本ではヒルギ科のオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギなどが沖縄県や鹿児島県の南西諸島に分布し、鹿児島市喜入のメヒルギ群落が自生の北限として知られています。
これらの樹木は、酸素の乏しい泥の中でも呼吸できるよう地上に突き出す呼吸根や、幹を支える支柱根といった気根を発達させ、さらに根を浅く水平方向へ広く張ることで軟弱な地盤に体を固定します。塩分への対応も種ごとに異なり、根でろ過するもの、葉から排出したり蓄積したりするものがあります。また、ヒルギ科の多くは母樹についたまま種子が発芽する胎生の性質を持ち、落下した芽が潮流に運ばれて分布を広げます。
生態系とは、生物とその生息環境の相互作用によって成り立つシステムのことです。マングローブ林という生態系では、樹木に加えて藻類や微生物、カニ、貝類、魚、鳥類、哺乳類などが複雑に関わり合っています。落葉は微生物やカニに分解されて食物網の出発点となり、入り組んだ根の間は外敵から身を隠せるため、魚介類の産卵場や稚魚の育成場として機能します。さらに、水中の窒素やリン、懸濁物を取り込んで水質を浄化する働きもあり、陸と海をつなぐ結節点として沿岸の生物多様性を支えています。
マングローブの重要性

マングローブ林がもたらす恩恵は、林の内部にとどまりません。密生した幹と根は波や流れのエネルギーを和らげ、高潮や波浪から海岸線を守るとともに、土壌の浸食を防ぎます。2004年のインド洋大津波以降は津波被害を軽減する効果にも注目が集まり、林の幅や密度、樹種と減災効果の関係を数値的に評価する研究が進められています。
また、林で育った魚介類は周辺の海域へと供給され、沿岸漁業を支えています。木材や燃料、薬用資源としても利用され、地域の暮らしと密接に結びついてきました。
近年とりわけ重視されているのが、炭素を蓄える機能です。マングローブ林は海草藻場や塩性湿地と並ぶ代表的なブルーカーボン生態系で、二酸化炭素を吸収するだけでなく、酸素の少ない土壌に有機物を分解されにくい形で長期間ためこみます。単位面積あたりの炭素貯留量は陸上の森林を上回るともいわれ、温室効果ガスの削減策として各国の気候変動対策にも位置づけられつつあります。
マングローブを破壊する要因

- 主な原因の一つは、土地利用の転換に伴う伐採です。マングローブ林は木材や燃料、建築資材として利用されるほか、エビ養殖池の造成や農地への転換のために大規模に伐採されてきました。
- また、港湾や工業用地、観光施設の造成といった沿岸開発と、それに伴う埋め立てによっても、多くのマングローブ林が失われています。上流のダムや護岸によって土砂や淡水の供給が変わることも、林の衰退につながります。
- さらに、汚染も生態系を脅かす要因です。工業廃水や生活排水、農薬などが流入すると水質が悪化し、生育が阻害されます。加えて、気候変動に伴う海面上昇も生息地の浸食を招く要因として懸念が高まっています。
マングローブの保護活動

こうした損失を食い止め、失われた林を回復させる取り組みは、世界各地で進められています。生物多様性の維持、水質浄化、沿岸侵食の防止といった機能が経済的な価値としても評価されるようになり、ラムサール条約にもとづく湿地の保全や各国の保護区の設定に加え、地域住民が管理の担い手となるコミュニティ主体の保全が広がっています。国連は7月26日を「マングローブ生態系の保全のための国際デー」と定めており、普及啓発の機会にもなっています。
マングローブの保護活動としては、マングローブ林の植林や再生、沿岸開発の規制、汚染防止、気候変動対策などが挙げられます。
- マングローブ林の植林・再生:生息地を拡大し、生態系を回復させる有効な手段です。苗木を植えるだけでは定着しない例も多く、近年は水の流れや地盤の高さを元に戻して自然の再生力を引き出す手法が重視されています。
- 沿岸開発の規制:保護区の指定や開発許可の厳格化、放棄された養殖池の再生などにより、マングローブ林の減少を防ぎます。
- 汚染防止:排水処理の整備やごみの流出抑制が、生態系の保全に不可欠です。
- 気候変動対策:温室効果ガスの削減に加え、海面上昇に応じて林が陸側へ移動できる後背地を確保しておくことが、将来にわたる保全につながります。


