水素基本戦略の前途と課題

水素基本戦略って何ですか?

地球環境の専門家
水素基本戦略とは、水素社会を実現するための政府の基本戦略のことです。水素社会とは、水素をエネルギー源として活用する社会のことです。

水素社会ってどんな社会ですか?

地球環境の専門家
水素社会では、水素をエネルギー源として活用することで、二酸化炭素排出量を削減し、環境負荷を軽減することができます。また、水素は貯蔵や輸送が比較的容易なため、再生可能エネルギーの活用にも適しています。
水素基本戦略とは。
「水素基本戦略」とは、再生可能エネルギーや水素といった、環境に優しいエネルギー源の利活用を推進するための政府の基本戦略です。2017年(平成29年)12月に開催された「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」において決定されました。
同年4月に開催された関係閣僚会議では、当時の安倍総理大臣が、政府一体となって水素社会の実現に取り組むため、年内に基本戦略を策定するよう指示を出しました。この指示に基づき、政府は「水素基本戦略」を策定しました。
「水素基本戦略」では、水素の製造や流通、利用に関する具体的な施策が盛り込まれています。また、政府は産業界や自治体、国民と連携して、水素社会の実現を目指しています。
水素基本戦略とは

水素基本戦略は、2017年に関係閣僚会議で決定された、水素社会の実現に向けた政府の基本方針です。経済社会・エネルギーシステムの変革が求められるなか、脱炭素社会の実現と長期的な経済成長を同時に達成するために、水素を中核に据えたエネルギー需給構造の構築を目指しています。
この戦略には、水素の製造、輸送、貯蔵、利用に関する技術開発・導入促進、水素需要の創出、水素供給網の整備、水素関連産業の育成、国際展開など、水素の産業化に向けた幅広い施策が盛り込まれています。具体的な目標としては、水素の供給コストを2030年までに30円/Nm³程度、将来的には20円/Nm³程度まで引き下げることや、水素の導入量を2030年に最大300万トン、2050年に2,000万トン程度に拡大することなどが掲げられています(その後、2023年の改定により目標は更新されています)。
水素社会の実現に向けて

水素社会の実現を阻む課題は数多くありますが、その中でも最も大きな課題のひとつが水素の製造コストの高さです。水素は現在、主に天然ガスや石炭から作られていますが、これらの化石燃料を使用すると大量の二酸化炭素が発生します。二酸化炭素は温室効果ガスであり、気候変動の原因となっています。そのため、水素社会を実現するためには、化石燃料を使わずに水素を製造する技術、いわゆるグリーン水素の製造技術を確立する必要があります。
もう一つの課題は、水素の貯蔵と輸送の難しさです。水素は常温常圧では気体であり、体積が大きいため、貯蔵と輸送が容易ではありません。そのため、水素を高圧で圧縮したり、液化したり、あるいはアンモニアや有機ハイドライドなどに変換して運ぶ技術の開発が進められています。
これらの課題を克服するために、日本政府は水素基本戦略を策定し、水素社会の実現に向けた取り組みを強化しています。水素基本戦略では、水素の製造コストの低減、水素の貯蔵・輸送の効率化、水素需要の拡大など、水素社会の実現に必要な施策が盛り込まれています。
政府の支援を受けながら、企業も水素社会の実現に向けた取り組みを進めています。エネルギー会社や化学メーカーが水素製造技術の開発に取り組んでおり、自動車業界では、トヨタ自動車が2014年に世界初の量産型燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」を発売し、2020年には新型「MIRAI」を発表するなど、水素利用の裾野が広がりつつあります。
こうした政府や企業の取り組みにより、水素社会の実現に向けた動きは着実に加速しています。
水素経済の創出

水素経済とは、水素をエネルギー源として広く利用する経済のことです。水素は、利用時に二酸化炭素を排出しないため、環境に優しいエネルギー源として期待されています。また、貯蔵や輸送が可能で、発電や燃料電池自動車の動力など、多様な用途に活用できます。
水素経済を実現するためには、水素の製造コストの低減と水素インフラの整備が不可欠です。製造コストを下げるためには、水電解などの製造技術の開発を進めるとともに、再生可能エネルギー由来の電力を活用してグリーン水素を製造することが重要です。インフラ整備の面では、水素ステーションの増設や、水素の貯蔵・輸送施設の拡充が求められます。
水素経済の創出は、脱炭素社会の実現に向けて重要な取り組みです。化石燃料への依存を減らし、環境負荷を軽減できるとともに、新たな産業を生み出し、雇用を創出する効果も期待されています。
水素社会の課題

水素社会の実現には、解決すべき課題が数多くあります。主な課題は次の三点です。
第一に、水素の製造コストが高いことです。水素は水の電気分解や天然ガスの水蒸気改質などによって製造されますが、いずれもエネルギーコストがかかります。そのため、水素のコストは化石燃料のコストよりも高くなりがちです。
第二に、水素の貯蔵・輸送が難しいことです。水素は常温常圧では気体であるため、貯蔵・輸送には圧縮や液化が必要となります。しかし、圧縮や液化にもエネルギーコストがかかります。また、水素は金属を脆化させる性質(水素脆化)があるため、貯蔵・輸送には特殊な容器や材料が必要です。
第三に、水素の利用インフラが未整備であることです。水素は燃料電池や水素エンジンなどで利用されますが、これらの機器はまだ十分に普及していません。また、水素ステーションなどの供給インフラも整備の途上にあります。
これらの課題を解決するためには、政府や企業による継続的な支援が必要です。政府は、水素の製造コストの低減や貯蔵・輸送技術の開発、水素の利用インフラの整備などに対して支援を行う必要があります。また、企業も水素の製造や利用に関する技術開発に投資し、水素社会の実現に向けて努力していくことが求められます。
水素基本戦略の今後

水素基本戦略の今後においては、水素の製造・貯蔵・輸送・利用に関するインフラの整備や、水素を利用した燃料電池や発電設備の開発などが、さらに推進されていく予定です。
また、水素の安全性と信頼性を確保するための基準や規制の整備も重要な課題となっています。
さらに、水素を活用した社会の実現に向けては、国民の理解や支持を得るための啓発活動や、産業界・自治体の連携を促進する政策支援も欠かせません。
水素基本戦略は2023年に改定され、新たな目標として、官民合わせて今後15年間で15兆円規模の投資を行うことなどが盛り込まれました。今後は、水素エネルギーの社会実装に向けて、各方面の取り組みがさらに加速していくことが予想されます。
このように、水素基本戦略は、水素の製造・貯蔵・輸送・利用に関するインフラの整備や、燃料電池・発電設備の開発など、多岐にわたる課題に焦点を当てた総合的な戦略であり、水素の潜在的な可能性を引き出し、水素社会の実現に向けて今後も推進されていくことが期待されています。


