気候変動枠組条約附属書I国が約束期間中に排出目標を上回り、その余剰分を次の約束期間の目標達成に充てる『バンキング』とは

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気候変動枠組条約附属書I国が約束期間中に温室効果ガスの排出目標を上回り、その余剰分を次の約束期間の目標達成に充てる『バンキング』とは

バンキングっていう用語を聞いたんだけど、どういう意味か教えてもらえますか?

地球環境の専門家

バンキングは、気候変動枠組条約の附属書I国が京都議定書で定められた温室効果ガスの排出削減目標について、ある約束期間中に目標を上回って削減できた場合、その余剰分を次の約束期間の目標達成に繰り越して使える仕組みのことです。

じゃあ、約束期間中に削減目標を上回ったら、余剰分を次の約束期間に持ち越せるってことですか?

地球環境の専門家

その通りです。バンキングは、温室効果ガスの排出削減を柔軟に進めるための仕組みとして京都議定書に盛り込まれました。目標を上回る削減を行えば次の約束期間の達成がより容易になるため、早期の削減行動を後押しする効果もあります。

バンキングとは。

「バンキング」とは、気候変動枠組条約の附属書I国が、京都議定書に定める温室効果ガスの排出削減目標を約束期間中に上回って達成した場合、その超過分を次の約束期間の目標達成のために使える仕組みのことです(京都議定書第3条13項)。

バンキングの概要

バンキングの概要

バンキングは、1997年に採択された京都議定書第3条13項に規定された制度で、第1約束期間(2008~2012年)から運用が始まりました。2012年のドーハ改正で定められた第2約束期間(2013~2020年)でも、一部に制限を設けたうえで引き続き認められています。

バンキングの対象となる主な(温室効果ガスの)排出枠には、次のようなものがあります。

  1. 割当量単位(AAU)京都議定書附属書B国に割り当てられる排出枠で、ある約束期間における余剰分は、原則として次の約束期間に繰り越すことができます。
  2. 認証排出削減量(CER)および排出削減単位(ERU)クリーン開発メカニズム(CDM)共同実施(JI)で発行される排出枠で、それぞれ初期割当量の2.5%を上限に繰越が認められています。

このようにバンキングは、短期的な変動を吸収しつつ、中長期的に温室効果ガス排出量を削減していくうえで重要な役割を果たしています。

バンキングの仕組み

バンキングの仕組み

バンキングは、温室効果ガスの排出削減に継続的に取り組むインセンティブを与え、長期的な削減目標の達成をより確実にすることを目的としています。

具体的な手続きとしては、国連気候変動枠組条約の附属書I国が、約束期間ごとの温室効果ガス排出量を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に報告します。実際の排出量が割当量(Assigned Amount)を下回っていた場合、その差分が国別登録簿上で次の約束期間の割当量に加算されます。

この繰越にあたっては、余剰分の算定や報告に厳格な透明性が求められます。

バンキングの適用範囲

バンキングの適用範囲

バンキングの適用対象は、数値化された温室効果ガス排出削減目標を負う気候変動枠組条約附属書I国です。附属書I国とは、1992年時点のOECD加盟国を中心とする先進国と、ロシアや東欧諸国などの市場経済移行国を指し、日本もこれに含まれます。

対象となる温室効果ガスは、京都議定書附属書Aに記載された6種類(二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆))です。なお、第2約束期間(ドーハ改正)からは三フッ化窒素(NF₃)が追加され、対象は7種類となりました。

バンキングの利点

バンキングの利点

バンキングの主な利点は、温室効果ガスの排出削減の進捗を弾力的に管理できる点にあります。余剰分を次の約束期間に繰り越せるため、経済状況やエネルギー政策の変化など不測の事態にも柔軟に対応できます。

さらに、各国の早期の温室効果ガス排出削減投資を促進する効果も期待されます。早い段階で省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入に投資して大幅な削減を実現した国は、その成果を次の約束期間にも活かせるため、前倒しで対策に取り組むインセンティブが生まれるからです。

また、余剰となったAAU(割当量単位)は国際排出量取引(IET)を通じて他の気候変動枠組条約附属書I国に売却することも可能で、削減努力を経済的価値に結びつけられます。

バンキングの課題

バンキングの課題

一方で、バンキングには課題もあります。温室効果ガスの大量の余剰排出枠が次期約束期間に繰り越されると、国際社会全体での実質的な削減努力が緩んでしまう可能性があります。特に、一時期、旧ソ連諸国などで経済が縮小し、(温室効果ガスの)実排出量が割当量を大きく下回った結果、余剰枠が生じました。この余剰は、実際の削減努力に基づくものではなく、いわゆる「ホットエア」と呼ばれて問題視されてきました。

こうした懸念に対応するため、京都議定書のドーハ改正では、第1約束期間から第2約束期間へのAAU(割当量単位)の繰越に一定の制限が設けられました。また、バンキングされた排出枠について厳格な算定・報告・検証(MRV)を確保することも、制度の信頼性を維持するうえで継続的な課題となっています。

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