ネイチャーポジティブとは何か?自然資本と生物多様性を取り戻す取り組み

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ネイチャーポジティブとは何か?自然資本と生物多様性を取り戻す取り組み

先生、ネイチャーポジティブという言葉の意味を教えてください。

地球環境の専門家

自然の損失を食い止めて反転させ、回復軌道に乗せる取り組みのことだよ。「これ以上悪化させない」段階にとどまらず、積極的に回復・増進させていこうという考え方なんだ。

なるほど。具体的には、どのようなことが含まれるんですか?

地球環境の専門家

森林の再生や海洋汚染の削減、自然と共生する再生可能エネルギーの導入、持続可能な農業や漁業の普及などだね。要するに、自然への負荷を減らしながら、自然を回復させる方向へ経済活動そのものを組み替えていくことなんだ。

ネイチャーポジティブとは。

「ネイチャーポジティブ」とは、生物多様性をはじめとする自然資本の損失を食い止め、反転させ、回復軌道に乗せることを目指す概念です。気候変動や資源の枯渇など人間活動に起因する環境問題が深刻化するなか、持続可能な社会を実現する鍵として国際的に注目されています。

ネイチャーポジティブの定義とは?

ネイチャーポジティブの定義とは?

国際的には、「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止めて反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という世界共通の社会目標として説明されます。日本では環境省が「自然再興」という訳語をあて、2023年3月に閣議決定された生物多様性国家戦略2023-2030でも、2030年のネイチャーポジティブ実現が全体目標に据えられました。

重要なのは、従来の自然保護が「これ以上失わない」ことを目標としてきたのに対し、失われた自然を取り戻し、基準年より豊かな状態へ引き上げることまで求める点です。そのため、保護区の設定や規制といった政策手段だけでなく、企業の事業活動や市民の消費行動を含め、社会のあらゆる層の関与が前提となります。持続可能な開発を土台から支える考え方といえるでしょう。

自然資本と生物多様性とは何か?

自然資本と生物多様性とは何か?

自然資本とは、森林・土壌・水・大気・生物といった自然環境を、経済を支える「資本(ストック)」としてとらえる概念です。そこから生み出される便益のフローが生態系サービスにあたり、食料・水・木材・医薬品原料などの供給、気候の安定や水質の浄化といった調整、レクリエーションや文化的価値の提供まで多岐にわたります。ストックが劣化すればサービスも細るため、自然資本の劣化は経済そのもののリスクとなります。世界経済フォーラムも、世界のGDPの半分以上が自然に中程度以上依存していると指摘しています。

一方、生物多様性とは、地球上の生命の豊かさを示す概念で、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性という3つのレベルで捉えられます。多様性が高いほど生態系は撹乱から立ち直りやすく、自然資本の「質」を支える基盤となります。

両者は密接に関連しており、一方が損なわれれば他方も損なわれます。例えば森林が破壊されると、二酸化炭素の吸収能力が低下して気候変動が進行すると同時に、動植物の生息地が失われて絶滅のおそれが高まる種も増加します。

ネイチャーポジティブに取り組む意義

ネイチャーポジティブに取り組む意義

森林破壊や海洋汚染、気候変動が同時に進行するいま、自然と調和した社会への転換は持続可能な未来を築くための前提条件です。

ネイチャーポジティブに取り組む意義は、大きく分けて3つあります。
  1. 自然資本生物多様性を回復させることで生態系のバランスが保たれ、気候変動や自然災害のリスクを軽減できること。
  2. 自然との触れ合いを通じて、人々の健康や幸福度(ウェルビーイング)の向上が期待できること。
  3. 自然資本に依存する経済活動の基盤を守り、新たな雇用の創出や持続的な経済成長につなげられること。

これら3つは互いを補強し合う関係にあり、環境・社会・経済のいずれか一つの視点だけでは実現できません。だからこそ、政府・企業・地域社会が役割を分担しながら連携することが欠かせないのです。

ネイチャーポジティブの具体例

ネイチャーポジティブの具体例

ネイチャーポジティブにかかわる国際合意の例としては、2021年6月に英国で開催されたG7コーンウォール・サミットが挙げられます。首脳コミュニケの附属文書として「G7 2030年自然協約(G7 2030 Nature Compact)」が合意され、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させる方針が打ち出されました。続く生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、2021年10月の第1部(昆明)を経て、2022年12月にカナダのモントリオールで開かれた第2部で昆明・モントリオール生物多様性枠組を採択します。同枠組のターゲット3には、2030年までに陸域・内陸水域および沿岸域・海域のそれぞれ少なくとも30%を、保護地域とOECM(保護地域以外で生物多様性の保全に貢献する地域)によって効果的に保全・管理する「30by30」目標が掲げられました。

日本はこうした流れを受け、2022年4月に「30by30ロードマップ」を策定しました。さらに2023年度からは、企業の社有林や社寺林、里地里山など、民間の活動によって生物多様性が守られてきた区域を「自然共生サイト」として認定し、OECMとして国際データベースに登録する取り組みを進めています。

ネイチャーポジティブを進めるための取り組み

ネイチャーポジティブを進めるための取り組み

こうした国際目標は、分野ごとの実践に落とし込んで初めて前進します。ネイチャーポジティブは持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「海の豊かさを守ろう」や目標15「陸の豊かさも守ろう」とも深く関連しています。

ネイチャーポジティブを進めるための取り組みには、次のようなものがあります。

  • 森林の保全と回復:世界では農地への転換などによって年間約1,000万ヘクタールの森林が失われており、保全と再生は気候変動対策と生物多様性保全を同時に進める要となります。
  • 海洋の保全と回復:海洋は地球表面の約7割を占め、熱や炭素を吸収・循環させて気候を調整しています。海洋保護区の拡大に加え、藻場や干潟が炭素を蓄える「ブルーカーボン」の活用、プラスチックごみの削減が課題です。
  • 都市の緑化:人口が集中する都市は自然が失われやすい場所です。公園や街路樹、緑の回廊を増やせば、ヒートアイランド現象の緩和や雨水の貯留といった機能を高めつつ、生きものの生息空間を確保できます。
  • 農業の持続可能性の向上:農地は土地利用の大きな割合を占め、農薬や肥料の使用は周辺の生態系にも影響します。日本では「みどりの食料システム戦略」が、2050年までに有機農業の取組面積を耕地面積の25%にあたる100万ヘクタールへ拡大する目標を掲げています。
  • 企業の持続可能性への取り組み:企業は原材料の調達を通じて自然に大きく依存し、影響も与えています。2023年に最終提言が公表されたTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みを用いて、自然への依存と影響、リスクと機会を把握・開示し、事業やサプライチェーンを見直す動きが広がっています。

これらの取り組みは、生物多様性の保全にとどまらず、気候変動の緩和や暮らしの質の向上にもつながります。日々の消費や地域の活動を通じて一人ひとりが関わりを持ち、未来の世代に豊かな自然を引き継いでいきましょう。

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