決定的十年への取り組み

先生、決定的十年について教えてください。

地球環境の専門家
決定的十年とは、パリ協定の1.5℃目標を達成するうえで2020年代の10年間が決定的に重要であることを示す言葉です。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「第6次評価報告書第1作業部会報告書」を踏まえ、2021年のCOP26で2030年までを「決定的な10年」(critical decade)と位置づけ、すべての締約国にさらなる行動が求められました。

2030年までに、温室効果ガスの排出量を2010年比で45%、2019年比で43%削減し、2050年頃には実質ゼロにする必要があるということですね。

地球環境の専門家
その通りです。COP26では、それまで努力目標とされてきた1.5℃目標が事実上の共通目標となり、排出量削減目標も引き上げられました。この10年間に対策を加速して実施することが、何より重要だと強調されています。
決定的十年とは
「決定的十年」とは、パリ協定の1.5℃目標を達成するために2020年代(〜2030年)の10年間が極めて重要であることを表す言葉で、いわば「勝負の10年」といえます。
2021年11月にグラスゴーで開催されたCOP26では、IPCCの「第6次評価報告書第1作業部会報告書」を踏まえて1.5℃目標の追求が改めて確認され、合意文書(グラスゴー気候合意)に2030年までを「決定的十年」と位置づける方針が盛り込まれました。これにより、それまで努力目標であった1.5℃目標が事実上の共通目標へと格上げされ、各国の排出量削減目標も引き上げられました。これからの10年間にどれだけ対策を加速・実施できるかが、その後の地球環境の行方を大きく左右します。
決定的十年の重要性

決定的十年への取り組みは、気候変動だけでなく、生物多様性の喪失、汚染、貧困、不平等といった地球規模の課題に同時に対処し、持続可能な未来を築くための変革を起こすことを目的としています。
決定的十年が重要とされる主な理由は、以下の通りです。
- 気候変動がすでに加速している:気候変動はすでに地球に大きな影響を及ぼしており、今後さらに深刻化することが予想されます。決定的十年は、気候変動を抑制し、その影響を軽減するためにあらゆる努力を尽くす期間です。
- 生物多様性が急速に失われている:生物多様性は私たちの生存に欠かせないものですが、その喪失速度は過去数十年で加速しています。決定的十年は、生物多様性を保全・回復させるための期間です。
- 汚染が地球環境を破壊している:大気汚染、水質汚染、土壌汚染などにより、私たちの健康や生態系が脅かされています。決定的十年は、こうした汚染を削減し、地球環境を保全するための期間です。
- 貧困と不平等が依然として広がっている:貧困と不平等は、紛争、飢餓、病気、教育格差などの問題を引き起こしています。決定的十年は、これらを削減し、持続可能な社会を構築するための期間です。
パリ協定と1.5℃目標

パリ協定は、2015年の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された国際的な協定です。世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃を十分に下回る水準に抑え、さらに1.5℃に抑える努力を追求することを目標としています。
気候変動はすでに、海面上昇による沿岸地域への被害、洪水・干ばつ・熱波などの異常気象の増加、生態系の変化に伴う動植物の絶滅などをもたらしています。こうした被害を軽減することが協定の目的です。
目標達成には、温室効果ガス(地球の熱を閉じ込める性質を持つ気体で、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素〔亜酸化窒素〕などが代表例)の排出量削減が不可欠であり、再生可能エネルギーの利用拡大やエネルギー効率の改善、森林伐採の抑制と植林の推進などが求められます。
IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書とは

IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年8月に公表した、気候変動に関する最新の科学的知見をまとめた評価報告書です。人類の活動が気候変動の主な要因であること、その影響がすでに世界各地で現れていること、悪影響を回避・軽減するには迅速かつ大幅な温室効果ガス排出削減が必要であることを明らかにしました。
本報告書は、世界中の気候科学研究の成果を包括的に評価したもので、気候変動の物理科学的基礎から影響、緩和と適応、関連政策まで多岐にわたります。各国の政策立案者をはじめ、企業や市民、研究者にとって重要な情報源であり、COP26をはじめとする国際交渉の科学的土台となりました。
COP26の決議事項

世界中のリーダーが集結したCOP26では、「決定的十年への取り組み」のもと、産業革命以前と比較した気温上昇を1.5℃に抑えることを目指し、さまざまな事項が採択されました。世界の平均気温はすでに約1.1℃上昇し、各地で深刻な影響が現れていることが、決議の前提として確認されています。
こうした影響に対処するため、温室効果ガスの排出削減と気候変動への適応の双方を加速する必要性が強調され、パリ協定の下で各国の削減目標の達成状況を追跡するメカニズムも強化されました。
具体的には、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の段階的削減、非効率な化石燃料補助金の段階的廃止、森林破壊の削減に向けた取り組みの強化などが盛り込まれました。これらは、世界各国が気候変動対策に真剣に取り組むという明確なメッセージであり、今後の国際的な気候変動対策の枠組み強化に大きな影響を与えると期待されています。
2030年に向けた排出量削減目標

1.5℃目標の達成に向け、各国は2030年までの温室効果ガス排出削減目標を設定し、さまざまな政策を実施しています。
これらの目標は、パリ協定の枠組みの中で各国が「国が決定する貢献(NDC)」として提出するものです。締約国は、国連気候変動枠組条約の下で排出削減努力を定期的に更新・強化し、進捗を国際社会と共有することになっています。各国のNDCを積み上げて1.5℃目標と整合させていくことが、決定的十年における最大の課題といえます。


