象牙取引問題の現状を解説!

先生、『象牙取引問題』について教えてください。

地球環境の専門家
『象牙取引問題』とは、ワシントン条約上の問題で、アフリカゾウの保護を訴える国々と、象牙を輸入したいとする日本などの国々との間で議論されてきた問題です。

なぜ、アフリカゾウの保護と、象牙を輸入したいという動きが対立するのでしょうか?

地球環境の専門家
アフリカゾウは密猟や乱獲によって個体数が減少し、絶滅の危機に瀕しています。一方で、象牙は工芸品や装飾品などの材料として珍重され、需要が根強くあります。そのため、アフリカゾウの保護と象牙の輸入をめぐって、国際的な議論が続いているのです。
象牙取引問題とは。
環境に関する用語である「象牙取引問題」とは、ゾウの保護と、工芸品などの材料として象牙を輸入したいとする動きをめぐる、ワシントン条約上の問題です。主にアフリカゾウの保護を訴える国々と、象牙の輸入を望む日本などの国々との間で議論されてきました。
象牙取引問題の概要

象牙取引は、長い歴史を持つ国際的な問題です。象牙は古くから工芸品や装飾品として珍重されてきましたが、近年では象牙の密猟や違法取引が深刻化しています。
象牙の主な用途は、工芸品や装飾品の製造です。その硬さや耐久性、独特の紋様から、彫刻や印章などの素材として広く用いられてきました。特にアジア諸国では、象牙で作られた仏像や装飾品が人気を集めてきました。
一方、密猟は主にアフリカで行われています。密猟者はゾウを殺して牙を切り取り、違法な仲介業者に売却します。仲介業者はそれを工芸品や装飾品の製造業者に販売し、製品となった象牙は世界各地の市場で流通します。
象牙取引問題は、ゾウの個体数を減少させるとともに、生態系にも悪影響を及ぼしています。密猟によってゾウの個体数は急激に減少しており、ゾウが担ってきた森林環境への役割が失われることで、生息地の劣化にもつながっています。
象牙取引問題は、国際社会が協力して解決すべき課題です。象牙取引を規制する法律の整備、密猟の取り締まり、違法取引の撲滅などの対策が必要です。また、象牙の需要を減らすために、象牙製品の購入を控えるなど、消費者の意識を高めることも重要です。
象牙取引がもたらす影響

象牙取引は、象牙製品への需要を満たすために、違法にゾウを殺害して象牙を採取することによって行われます。この取引は、ゾウの個体数の減少、生態系の破壊、組織犯罪の増加など、さまざまな悪影響を及ぼしています。
象牙取引による最大の被害は、ゾウの個体数の減少です。アフリカゾウの個体数は、20世紀半ばには数百万頭いたとされますが、密猟などの影響で大きく減少し、近年の調査では約40万頭程度にまで落ち込んでいるとされています。密猟が続けば、ゾウは将来的に絶滅する可能性があります。
象牙取引は、生態系の破壊にもつながります。ゾウは森や草原を移動しながら草を食み、樹木を倒すことで植生の更新を促し、種子散布にも寄与しています。ゾウが減少すると、こうした生態系の機能が損なわれ、植生バランスの崩れにつながります。
さらに、象牙取引は組織犯罪の増加にもつながっています。象牙取引は多くの場合、国際的な犯罪組織によって行われており、資金洗浄や武器密輸などの違法行為と結びついていると指摘されています。また、関係国における汚職や賄賂の温床にもなっています。
ワシントン条約と象牙取引

ワシントン条約(CITES)は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約です。アフリカゾウは1989年に附属書Ⅰに掲載され、原則として象牙の国際商業取引は禁止されました。ただし、一部の国の個体群については後に附属書Ⅱに移行され、限定的な条件下での取引が認められた経緯もあります。
ワシントン条約は1975年に発効し、現在では180を超える国・地域が加盟しています。日本も1980年に加盟しています。日本では国際的な商業取引は禁止されていますが、国内での象牙の所持や、登録された全形牙・事業者を通じた取引は法律で認められています。そのため、国内で象牙製品を購入することは可能ですが、海外への持ち出しは原則として禁止されています。
ワシントン条約は象牙取引の規制に一定の効果を上げていますが、密猟によるゾウの殺害は依然として続いています。密猟された象牙は密輸ルートを通じて、主に中国や東南アジアへ流れてきました。中国では彫刻や工芸品の素材として、東南アジアでは装飾品や伝統的な用途で象牙が取引されてきました。
密猟を阻止するためには、ワシントン条約加盟国による取り締まりの強化と、象牙の需要そのものを減らす取り組みが重要です。
日本の象牙輸入に関する動き

日本の象牙輸入の現状
日本では、ワシントン条約に基づき、1990年以降、原則として象牙の商業目的での国際取引は禁止されています。ただし、1999年と2009年には条約締約国会議の決定により、一部のアフリカ諸国からの一回限りの輸入が例外的に認められました。それ以前から国内に存在する象牙の保有や、登録された全形牙の取引は認められており、現在も国内には多くの象牙製品が流通しています。
近年、日本政府は象牙取引管理の強化を進めています。2018年には「種の保存法」の改正により、象牙取扱事業者の登録制が導入され、全形牙の登録要件も厳格化されました。これにより、国内市場の管理体制は強化されたとされています。
日本の象牙輸入の課題
日本の象牙取引規制は一定の効果を上げていますが、課題も残されています。その一つが象牙製品の密輸です。一部の業者は、偽造書類や非正規ルートを利用して象牙製品を国外へ持ち出すなどの違法行為を行っており、特に中国などへの不正輸出が問題視されてきました。
日本の象牙輸入の将来
象牙取引に対する国際的な視線は厳しさを増しており、日本の規制も今後さらに強化される可能性があります。国際社会では象牙の国内市場の閉鎖を求める動きが強まっており、日本政府もこうした国際的な潮流を踏まえた対応を検討していくことが求められます。
今後の象牙取引問題の展望

象牙取引は、違法かつ倫理的に問題があるにもかかわらず、依然として世界各地で行われています。しかし近年では、象牙取引を禁止または制限する動きが世界的に強まっており、今後さらに規制が広がる可能性があります。
1989年にはワシントン条約でアフリカゾウが附属書Ⅰに掲載され、象牙の国際商業取引が原則禁止となりました。さらに、世界最大の象牙市場とされていた中国は、2017年末をもって国内の象牙の商業加工・販売を全面的に禁止しました。これは象牙取引に大きな打撃を与えたと評価されています。
その他の国でも規制強化の動きが進んでいます。イギリスは2018年に「象牙法(Ivory Act)」を成立させ、ごく一部の例外を除く象牙取引を厳しく禁止しました(施行は2022年)。アメリカやEU諸国でも、国内市場の閉鎖や輸出入規制の強化が進められています。
今後、象牙取引を禁止・制限する動きはさらに強まると予想されます。象牙取引が違法かつ倫理的に問題があることが世界的に認識されつつあること、そして消費者の意識変化により象牙の需要そのものが減少していることが、こうした流れを後押ししていくでしょう。


