キャップとは何か?排出量取引制度を理解する

(排出量取引制度の話題で・・・)この文章に出てくる「キャップ」の意味を、教えてください。

地球環境の専門家
キャップとは、排出量取引制度において、対象となる主体(国、自治体、企業など)の全体に対して設定される、温室効果ガス排出量の総量の上限を指す用語です。この総量を個々の主体に配分したものを「排出枠」と呼びます。

その総量の上限は、どのように決められるのですか?

地球環境の専門家
政府などが、排出削減目標に基づいて制度全体で許容する排出量として設定します。その上限の範囲内で、各主体に排出枠が割り当てられます。
排出量取引制度における「キャップ」とは。
排出量取引制度において、「キャップ」は、国・自治体・企業などの全体に設定される温室効果ガス排出量の総量の上限を指す用語です。この上限を個々の主体に配分したものが「排出枠」であり、キャップの範囲内で排出枠の一部を移転または獲得する排出量取引の方式を「キャップ・アンド・トレード」と呼びます。
キャップの概要

排出量取引制度において、「キャップ」は、マクロな市場の単位(主に政府など)が特定の温室効果ガスの排出量に対して設定する上限のことです。通常、何年といった一定期間を単位に設定され、温室効果ガスの排出量を削減するための代表的な政策手段の一つとして位置づけられています。キャップが設けられることで、政府や企業は排出削減に向けた具体的な行動を求められます。
このキャップは、排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)の中核をなす仕組みです。設定した上限のもとで排出枠を企業に配分し、市場での売買を通じて削減を促す点に特徴があります。排出枠の市場価格が上昇するほど、排出量を削減するインセンティブが強く働く構造です。
キャップ・アンド・トレードシステム

キャップ・アンド・トレードシステム(排出量取引制度)とは、温室効果ガスの排出量に上限(キャップ)を設け、その範囲内で排出できる排出権を企業や組織間で取引させる制度です。温室効果ガスの排出量削減と気候変動の緩和を目的としています。
このシステムでは、まず政府が排出削減目標に基づいて排出量の上限を設定し、企業や組織に排出権を配分します。各主体は付与された範囲内で温室効果ガスを排出でき、排出権に余裕がある場合は他者に売却でき、不足する場合は他者から購入できます。こうした売買は排出権取引市場で行われます。
この仕組みは、企業や組織に温室効果ガス排出量削減のインセンティブを与えると同時に、排出権の売買を通じて社会全体の削減コストを効率化できる点に大きな利点があります。
キャップの課題と展望

- キャップの水準を適切に決定することが容易ではありません。厳しすぎれば企業の操業や雇用に悪影響を与えるおそれがあり、緩すぎれば十分な排出削減が実現できません。
- 制度の施行と遵守の確保が難しい点です。排出源が報告する排出量を検証するには相応の費用と時間を要します。
- 温室効果ガス排出の国外移転(カーボンリーケージ)を引き起こす可能性があります。規制の対象となる排出源が、規制の及ばない地域へ生産拠点を移すことで、制度を事実上回避するケースが懸念されます。
これらの課題にもかかわらず、キャップ制度は排出削減の有望な手段です。排出源に削減のインセンティブを与え、排出量取引市場を通じて費用対効果の高い削減を促すとともに、政府に削減目標の設定とその達成に必要な政策の実施を促す役割も果たします。
国際的な取り組みにおいても重要な役割を担います。パリ協定は世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えることを目標としており、キャップ制度はこの達成に向けた重要なツールと位置づけられています。
日本におけるキャップの導入状況

日本は、1997年に京都で開催されたCOP3で京都議定書の採択を取りまとめ、2002年に同議定書を締結しました。2008年から2012年までの第一約束期間には、温室効果ガス排出量を1990年比で6%削減することを目標としました。
この目標達成に向け、日本政府は2008年10月から試行排出量取引スキームを開始しました。これは企業が自主的に排出削減目標を設定し、目標に対する過不足分を排出枠として取引できる制度です。自治体レベルでは、2010年4月に東京都排出量取引制度が大規模事業所を対象とする義務的なキャップ・アンド・トレードとして始まり、2011年には埼玉県でも同様の目標設定型排出量取引制度が導入されました。これらの制度では、対象事業者が排出量を報告し、制度の登録簿上で排出枠を売買できます。
その後、2050年カーボンニュートラル目標の実現に向け、GXリーグの枠組みのもとでGX-ETS(排出量取引制度)が2023年度に自主参加型として始まりました。さらに2026年度からは、CO2排出量が多い大企業(前年度までの3か年度平均で年10万トン以上)を対象に参加が義務化され、制度が本格稼働の段階に入りました(2025年に成立した改正GX推進法に基づきます)。制度の有効性をめぐる議論もありますが、日本政府は制度の見直しを継続し、排出削減効果の一層の向上を目指しています。
キャップの将来性

- 支持する立場からは、地球温暖化の防止と人々の健康保護に効果的な手段であり、すでに複数の地域で成果を上げていることから、今後もその有効性は維持されるとの主張がなされています。
- 一方、批判的な立場からは、排出にコストがかかることで企業の競争力低下や閉鎖、雇用削減につながりかねないとの懸念が示されています。
キャップの将来性は、主に政治的・経済的・技術的な要因によって方向づけられます。政治的にはキャップを推進する政党と反対する政党のどちらが政権を担うか、経済的には制度が経済成長や雇用に及ぼす影響の度合い、技術的には脱炭素技術の発展や制度設計の工夫によってどの程度の実効性を発揮できるかが、それぞれ鍵となります。


