グロスネットアプローチとは?

グロスネットアプローチについて教えてください。

地球環境の専門家
グロスネットアプローチとは、温室効果ガスの排出量算定方式の一つで、吸収源から得られる吸収量を算入できる方式のことです。

京都議定書では、グロスネットアプローチが採用されているそうですね。具体的にはどのように計算されるのでしょうか?

地球環境の専門家
京都議定書では、「1990年以降」の「直接的かつ人為的」な「植林・再植林・森林減少」といった活動から得られる吸収・排出量に限って算入できます(第3条3項)。基準年(1990年)の排出量はそのまま(吸収量を差し引かずに)カウントし、目標年(約束期間)の排出量からは森林などによる二酸化炭素の吸収分を差し引いて計算する方式です。
グロスネットアプローチとは。
環境用語のひとつである「グロスネットアプローチ」とは、温室効果ガスの排出量の算定方法のうち、吸収源から得られる吸収量を算入することができる方式のことです。この方式は、京都議定書で採用されました。
京都議定書では、「1990年以降」の「直接的かつ人為的」な「植林・再植林・森林減少」といった活動から得られる吸収・排出量に限って算入することができることになりました(第3条3項)。算入方法としては、基準年(1990年)の排出量は吸収量を差し引かずにカウントし、目標年(約束期間)の排出量から森林などによる二酸化炭素の吸収分を差し引いて計算します。
グロスネットアプローチの概要

グロスネットアプローチとは、温室効果ガスの排出量を算定する際に、基準年は人為的活動による吸収量を加味せず排出量のみ(グロス)を計上し、目標年(約束期間)には森林吸収などによる吸収量を差し引いた純排出量(ネット)を計上する方式です。基準年と目標年で算定方法が異なる点が特徴で、結果として吸収源対策の貢献分を排出削減量として組み込むことができます。
この方式は、気候変動枠組条約に基づく京都議定書において、先進国の数値目標達成にあたり採用されました。基準年に吸収量を計上しない一方で、目標年では吸収量を排出量から差し引けるため、各国は植林や森林管理を通じて削減目標の達成に活用することが可能となります。
京都議定書におけるグロスネットアプローチ

京都議定書におけるグロスネットアプローチとは、温室効果ガスの排出削減目標の達成にあたり、基準年(1990年)の排出量は吸収源を考慮しない総量で計上し、目標年(第一約束期間:2008~2012年)には森林吸収源等による吸収量を差し引いた値で計上する算定手法のことです。京都議定書は1997年に採択され、2005年に発効しました。
グロスネットアプローチのメリットは、吸収源対策を排出削減目標の達成に活用できる点にあります。エネルギー起源の排出削減だけでは目標達成が難しい場合でも、植林・再植林・森林管理といった吸収源活動を組み合わせることで、目標達成の実現性が高まります。また、産業活動を急激に縮小させることなく、森林吸収を通じて経済活動と排出削減を両立できる点も利点とされます。
一方で、課題もあります。第一に、森林吸収量の測定・報告・検証(MRV)には不確実性が伴い、人為的活動による吸収分と自然変動による吸収分を区別することが技術的に難しいという問題です。第二に、対象となる活動が「直接的かつ人為的な植林・再植林・森林減少」(第3条3項)に限定され、追加的な森林管理活動(第3条4項)の扱いについても各国間で議論があったことです。
京都議定書におけるグロスネットアプローチの具体例として、日本の事例があります。日本は第一約束期間において基準年比6%の削減目標を負っており、その達成のために国内のエネルギー起源CO₂排出削減に加え、森林吸収源対策(最大3.8%分)や京都メカニズム(クリーン開発メカニズムなど)を活用しました。これらの取組みの結果、日本は第一約束期間における削減目標を達成しています。
グロスネットアプローチの長所と短所

グロスネットアプローチの長所は、基準年と目標年とで算定方法を変えることにより、森林などの吸収源活動を排出削減目標の達成に組み込みやすくする点にあります。これにより、各国は植林・再植林などの吸収源対策を積極的に進めるインセンティブを持つことができます。また、計算ルールが比較的シンプルであるため、各国の報告制度に組み込みやすいという利点もあります。
一方、短所としては、基準年に吸収量を計上せず、目標年にのみ吸収量を差し引くため、見かけ上の削減量が大きくなりやすく、実際の人為的削減努力を過大評価する可能性があるという点が挙げられます。また、森林の吸収量には自然変動の影響が大きく、人為的活動による寄与のみを正確に切り分けることが難しいため、国際的な比較や検証においては不確実性が残ります。これらの問題を緩和するため、後続の制度(例:パリ協定下の制度)では、より精緻な算定方法や報告ルールが議論されています。
グロスネットアプローチの課題

グロスネットアプローチには、いくつかの課題が指摘されています。
第一の課題は、基準年と目標年で算定方式が異なることに起因する非対称性です。基準年では吸収量を計上せず、目標年でのみ吸収量を排出量から差し引くため、見かけの削減量が大きくなり、実際の人為的削減努力を正確に反映しないおそれがあります。
第二に、吸収量の測定の難しさです。森林による二酸化炭素の吸収量は、樹種、林齢、気候条件、土壌など多くの要因に左右され、年々変動も大きいため、正確に計測することが容易ではありません。さらに、人為的活動による吸収と自然変動による吸収を区別することも困難です。
第三に、対象活動の範囲に関する課題があります。京都議定書第3条3項では、植林・再植林・森林減少という限定された活動のみが算入対象とされており、より広範な森林管理や農地管理などの吸収源活動をどう扱うかが議論となりました(第3条4項の選択的活動)。これにより、国ごとの算入範囲に差が生じる可能性があります。
第四に、永続性のリスクです。植林等で吸収された炭素は、森林火災や伐採、病虫害などにより再び大気中に放出される可能性があり、削減量の永続性をどのように担保するかも重要な論点です。
これらの課題があるものの、グロスネットアプローチは、吸収源対策を国際的な気候変動対策の枠組みに組み込むうえで重要な役割を果たしてきました。
グロスネットアプローチの今後の展望

グロスネットアプローチの今後の展望は多面的です。京都議定書の枠組みは2020年で終了し、現在はパリ協定のもとで各国が国が決定する貢献(NDC)を提出し、温室効果ガスの排出削減・吸収量の報告を行っています。パリ協定下では、土地利用・土地利用変化・森林(LULUCF)分野の算定方法もさらに精緻化が進められており、グロスネットアプローチの考え方は、より透明性の高い算定ルールへと発展しつつあります。
また、カーボンニュートラルの達成に向けて、森林吸収源だけでなく、農地土壌、湿地、海洋(ブルーカーボン)などを含む幅広い吸収源活動を算定対象に含める動きが進んでいます。これに伴い、人為的活動による吸収と自然変動による吸収を区別する手法や、衛星観測などの先端技術を用いた測定・報告・検証(MRV)の高度化が課題となっています。
さらに、各国間で算定方法やデータを共有する国際的な連携も重要です。途上国を含む各国の能力開発を支援し、共通の算定基準のもとで吸収源対策を推進することで、世界全体の気候変動対策を強化することができます。
グロスネットアプローチの考え方は、吸収源対策を気候変動対策に組み込む上で重要な礎となっており、今後はより精緻な算定方法と国際的なルールの整備によって、持続可能な社会の実現に貢献していくことが期待されます。


