炭素国境調整措置とは?カーボンリーケージを防ぐ仕組み

環境問題に関すること
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炭素国境調整措置とは?カーボンリーケージを防ぐ仕組み

炭素国境調整措置って、どんな仕組みなのですか?

地球環境の専門家

炭素国境調整措置は、気候変動対策の不十分な国からの輸入品に炭素への課金を行う仕組みだよ。これにより、カーボンリーケージを防ぐことを目的としているんだ。

カーボンリーケージって、どういう意味ですか?

地球環境の専門家

カーボンリーケージとは、欧州連合(EU)の温室効果ガス排出量削減の取組が域外と比べ相対的に強いことから、域内へ輸入品が過度に流入したり、気候変動対策への取組が弱い国への域内産業の流出が起こることにより、結果的に世界全体での排出量削減に繋がらなくなることのことだよ。

炭素国境調整措置とは。

炭素国境調整措置とは、温室効果ガスの排出を抑制する取り組みが不十分な国から輸入される製品に関税を課す仕組みのことです。

2021年7月14日、欧州委員会はこの炭素国境調整措置に関する法案を公表しました。この法案の目的は、EU域内で排出量削減への取り組みを強化することで、域外から製品が過度に流入したり、取り組みが弱い国に域内産業が流出したりすることによる、世界全体の排出量削減の低下を防ぐことです。

欧州委員会は、この措置がEUの削減目標に悪影響を与えるだけでなく、世界全体の排出量増加にもつながりかねないことを強調し、あくまで気候変動対策としての導入を目指すとしています。

具体的には、EU域内の事業者が対象となる製品をEU域外から輸入する際に、域内で製造した場合にEU排出量取引制度(EUETS)に基づいて課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるものです。

欧州委員会の炭素国境調整措置(CBAM)法案では、2023年から、対象事業者に報告義務を課し、2026年から、実際に関税をかけることが提案されています。今後、欧州議会・理事会での審議が行われる予定です。

炭素国境調整措置の目的

炭素国境調整措置の目的

炭素国境調整措置においては、一定の基準を満たさない国から輸入される製品に、税金を課します。

この措置の目的は、カーボンリーケージを防ぐことです。カーボンリーケージとは、ある国が自国内の温室効果ガス排出量を削減する政策を実施した場合、その国の企業が生産拠点を海外に移転し、温室効果ガス排出量が削減されないという現象のことです。

炭素国境調整措置は、カーボンリーケージを防ぐことで、世界の温室効果ガス排出量を削減することを目的としています。

また、炭素国境調整措置は、国内の企業が海外に移転することを防ぐことで、雇用の維持にもつながると期待されています。

炭素国境調整措置の仕組み

炭素国境調整措置の仕組み

見方を変えれば、炭素国境調整措置においては、輸入された製品に含まれる炭素排出量に対して、税金をかけることになります。これにより、炭素価格の高い国と炭素価格の低い国との間の競争条件を平準化し、カーボンリーケージを防ぐことができます。

炭素価格の高い国では、製品を生産するコストが上がるので、生産拠点が炭素価格の低い国に転出し、その結果、炭素排出量も移転されてしまいます。これは、炭素価格の高い国で生産された製品が競争力を失い、生産が国外に移転することで起こります。

炭素国境調整措置は、このカーボンリーケージを防ぐため、輸入された製品に含まれる炭素排出量に対して、税金を課します。これにより、輸入された製品の価格は、国内で生産された製品の価格と同等になります。

炭素国境調整措置は、EUや中国など、多くの国や地域で導入が検討されています。日本でも、2021年4月に閣議決定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、炭素国境調整措置の導入が検討されています。

炭素国境調整措置の導入時期

炭素国境調整措置の導入時期

炭素国境調整措置は、EUでは2026年から段階的に課税し、2034年には全面実施する予定となっています。また、日本も同様に2025年から試験的に開始し、2030年までに本格的な導入を目指す方針を示しています。

炭素国境調整措置の導入時期については、まだ議論が続いており、各国の思惑が交錯しています。企業の負担増につながるため、慎重な議論も必要かもしれません。

今後も議論が続くとみられますが、気候変動への対策が急務であることから、早期の開始が求められています。

炭素国境調整措置の課題

炭素国境調整措置の課題

炭素国境調整措置には、多くの課題があります。

第一に、炭素排出量を正確に測定することが難しいことが挙げられます。製品の製造過程やライフサイクル全体を通して、炭素排出量を正確に追跡することは困難です。

第二に、炭素国境調整措置は、貿易戦争を引き起こす可能性があります。炭素排出量の高い国は、炭素国境調整措置を不公平な貿易障壁と見なすかもしれません。

第三に、炭素国境調整措置は、途上国に悪影響を及ぼす可能性があります。途上国は、炭素排出量が多く、炭素国境調整措置の対象となりやすいため、貿易競争力が低下する場合があります。

第四に、炭素国境調整措置は、企業のコストを増大させる可能性があります。企業は、炭素排出量を削減するために、投資や技術革新を行う必要があり、コストが増大するかもしれません。

炭素国境調整措置の今後

炭素国境調整措置の今後

炭素国境調整措置CBAM)は、まだ初期段階にあるため、その具体的な影響はまだ不明です。

しかし、この政策は、EUとEU以外の国との間の貿易紛争を引き起こす可能性があります。また、EUが世界最大の経済圏であることから、CBAMは国際的な貿易のルールを大きく変えてしまう可能性もあります。

CBAMは、気候変動問題におけるEUのリーダーシップを強化する可能性を秘めた画期的な政策です。しかし、その実施には多くの課題があり、EUがこれらの課題をどのように克服するかに注目が集まっています。

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