シカゴ気候取引所とは?環境政策の仕組みを解説

シカゴ気候取引所が自主参加型であるのはなぜでしょうか?

地球環境の専門家
米国には連邦レベルで温室効果ガス排出を義務的に規制する法律がなかったため、参加企業が自ら法的拘束力のある削減契約を結び、自社の事情に応じた方法で排出量を減らせるようにする目的で、自主参加型として設計されました。

シカゴ気候取引所はどのように運営されていたのでしょうか?

地球環境の専門家
参加メンバーごとに排出削減目標を設定し、第三者機関による排出量の監視・検証を行ったうえで、排出枠(CFI)を市場で売買する仕組みで運営されていました。価格は需給によって決まり、目標未達の参加者はCFIを購入し、超過達成した参加者は余剰分を売却できました。
シカゴ気候取引所とは。
シカゴ気候取引所(Chicago Climate Exchange、CCX)は、2003年に開始された北米初の自主参加型・温室効果ガス排出量取引市場です。CCXのメンバーは、6種類の温室効果ガスの排出削減について法的拘束力のある契約を結びました。第I期(2003年~2006年)はベースライン(1998年~2001年の年平均排出量)から年1%ずつ、合計4%の削減を目標とし、第II期(2007年~2010年)にはベースラインの94%(6%削減)まで目標が引き上げられました。
毎年の削減目標を上回る削減を達成したメンバーは、余剰の排出枠をCCXを通じて売却することができ、目標を超えて排出した場合は、不足分を購入して埋め合わせる必要がありました。CCXで取引される証券はCFI(Carbon Financial Instrument)と呼ばれ、1単位は二酸化炭素換算100トンの排出量に相当します。
2007年までに、330を超える企業、市、州、その他の団体が、参加メンバー、オフセット事業の検証・認証機関、または取引参加者としてCCXに関与しました。
シカゴ気候取引所の概要

シカゴ気候取引所(Chicago Climate Exchange、CCX)は、世界初の自主参加型温室効果ガス排出量取引所です。2003年に経済学者のリチャード・サンダー氏を中心として設立された民間の取引所で、米国・カナダなど北米の企業を中心に、自治体や団体も参加メンバーとして名を連ねていました。
取引対象は、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、亜酸化窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆)の6種類の主要な温室効果ガスです。CCXは、排出量取引制度(ETS)の枠組みに基づき、削減目標を達成して余剰を生んだ参加者と、追加の排出枠を必要とする参加者の間に市場を提供することで、温室効果ガスの費用効率的な削減を促すことを目的としていました。
CCXは2010年末に取引を終了し、閉鎖されました。閉鎖の主な背景には、米国で連邦レベルの排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード法案)が成立せず、自主的取引市場の需要が縮小したことがあります。一方で、CCXは排出量取引の仕組みを実地で構築し、その後の各国・各地域の排出量取引市場の設計に影響を与えた先駆的な取り組みとして高く評価されています。
シカゴ気候取引所の仕組み

CCXの仕組みは、排出権取引制度(キャップ・アンド・トレード方式)をベースとしています。米国イリノイ州シカゴに本拠を置き、環境商品取引の中心地のひとつとなっていました。
参加企業や団体には、ベースライン排出量に対する削減目標が割り当てられ、目標を上回って排出量を削減した主体は、その差分をCFI(排出枠)として他の参加者に売却できます。一方、目標を超えて排出した主体は、不足分の排出枠を市場で購入して埋め合わせる必要があります。排出枠の価格が上昇すれば、企業には排出削減のための設備投資や技術開発を進めるインセンティブが強まり、結果として温室効果ガス排出量の削減が進む仕組みです。
このような市場メカニズムを通じて、CCXは費用効率的な排出削減と気候変動対策への貢献を期待されていました。
シカゴ気候取引所の排出枠取引

CCXの排出枠取引は、温室効果ガスの排出削減のために市場メカニズムを活用する制度です。参加者ごとに排出量の上限(キャップ)が設定され、その範囲を超えて排出する場合には、市場から排出枠を購入する必要があります。これにより、企業には自社で排出量を削減するか、市場から排出枠を購入するかをコスト比較で判断するインセンティブが生まれ、削減技術への投資や開発が促されます。
CCXは、世界に先駆けて温室効果ガス排出枠の取引を本格的に実現した自主参加型市場のパイオニアであり、現在多くの国・地域で導入されている排出枠取引制度の原型のひとつとなりました。
取引対象は、二酸化炭素やメタンをはじめとする6種類の温室効果ガスで、排出枠(CFI)の価格は需要と供給によって決まる仕組みでした。需要が増えれば価格が上昇して排出削減のインセンティブが高まり、需要が減れば価格は下落します。
このようにCCXの排出枠取引は、企業に排出削減のインセンティブを与え、コスト効率的な技術開発を促進する役割を果たしました。
シカゴ気候取引所の国内外の展開

CCXは、参加者が法的拘束力のある削減契約を結ぶことで排出枠を獲得し、超過達成分を売却して収益を得られる仕組みのもと、北米を中心に取引を拡大しました。
国際展開の面でも、CCXは大きな役割を果たしました。欧州では関連市場としてEuropean Climate Exchange(ECX)が設立され、EU排出量取引制度(EU-ETS)の取引基盤として機能しました。中国では、PetroChina(中国石油天然気)や天津産権交易中心などとの合弁により天津排出権取引所(Tianjin Climate Exchange)の設立にも関与し、国際的な排出量取引ネットワークの形成に寄与しました。
CCXとそのグループ取引所は、企業や団体に排出削減のインセンティブを提供することで気候変動対策を促進するとともに、排出量に明示的な価格を付けることで、低炭素技術や製品の開発を後押しすることも期待されていました。
シカゴ気候取引所の今後の展望

CCXは、買い手と売り手が市場で価格を形成し、合意した価格で排出枠を売買するプラットフォームを提供することで、企業が排出削減コストを抑えながら温室効果ガスを削減する仕組みを示しました。
2010年に閉鎖されたものの、自主参加型の取引所として温室効果ガス削減市場を実際に創出し、環境政策の実例として大きな注目を集めた点は重要な功績です。
今後の展望として、CCX自体は閉鎖されたものの、その経験は世界各地の排出量取引市場、たとえばEU-ETS、カリフォルニア州キャップ・アンド・トレード制度、中国全国排出権取引市場(全国碳排放权交易市场)などに受け継がれています。気候変動対策が世界的に強化されるなかで、市場メカニズムを通じて排出削減コストを引き下げ、新たな技術開発やイノベーションを促す枠組みの重要性は今後ますます高まると考えられます。
CCXが切り拓いた自主参加型の排出量取引モデルは、現在のカーボン市場の基礎を築いた取り組みとして、環境政策の歴史において重要な位置を占めています。


