カンクン宣言とは何か?その概要と内容

先生、カンクン宣言ってなんですか?

地球環境の専門家
カンクン宣言とは、2016年12月にメキシコのカンクンで開催された生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)期間中に行われた閣僚級会合において採択された宣言だよ。

それって、どんな内容なんですか?

地球環境の専門家
カンクン宣言には、7項目の宣言と18項目の具体的な行動が含まれていて、生物多様性の保全や持続可能な利用、そして生態系サービスに依存する生命の福利を守ることを目指しているんだ。
カンクン宣言とは。(はじめに)
環境に関する用語の文脈では、「カンクン宣言」は、生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)期間中に行われた閣僚級会合(2016年12月にメキシコ・カンクンで開催されました)において採択された宣言を指すことが一般的です。この宣言には、「生物多様性の保全及び持続可能な利用、並びに生物多様性が支えている生態系サービスに依存するあらゆる生命の福利に必須の条件として、一部の文化では母なる大地と認識されている、自然との共生が不可欠であること」など7項目の宣言と合わせて18項目にも及ぶ具体的な行動を通じて取り組むことを約束する内容が盛り込まれています。(2019年3月作成)
カンクン宣言とは何か?(複数のカンクン宣言の存在)

「カンクン宣言」という名称は、メキシコのカンクンで採択された複数の国際文書について用いられてきました。代表的なものとして、2016年12月に開催された生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)の閣僚級会合で採択された、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する宣言があります。
また、気候変動分野では、2010年12月にカンクンで開催された気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)で「カンクン合意」が採択され、その中で気候変動への国際的な取り組み強化が合意されました。カンクン合意では、以下のような点が確認されています。
カンクン合意の主なポイント
- 産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるという長期目標の共有
- 先進国・途上国双方による温室効果ガスの排出削減行動の位置づけ
- 再生可能エネルギーの利用拡大やエネルギー効率改善を含む緩和策の推進
- 気候変動影響への適応策(適応枠組み「カンクン適応枠組み」)の設立
- 途上国支援のための緑の気候基金(GCF)の設立や技術移転メカニズムの構築
このように、カンクンで採択された宣言・合意は、生物多様性と気候変動の両面で国際的な協調行動を強化する重要な指針となっています。
カンクン宣言の概要(生物多様性の主流化に関するカンクン宣言)

本稿では、2016年に生物多様性条約COP13の閣僚級会合で採択された「カンクン宣言」を中心に扱います。正式には「生物多様性の主流化に関するカンクン宣言」と呼ばれ、農業、林業、漁業、観光といった生物多様性に深く関わる分野に、生物多様性の保全と持続可能な利用の視点を組み込むこと(主流化)を中心的なテーマとしています。
宣言では、「生物多様性の保全および持続可能な利用、ならびに生物多様性が支えている生態系サービスに依存するあらゆる生命の福利に必須の条件として、一部の文化では母なる大地と認識されている、自然との共生が不可欠であること」など、7項目の基本認識が示されています。これに加えて、各国が取り組むべき18項目の具体的行動が掲げられ、セクター横断的な政策統合や先住民・地域コミュニティの知恵の尊重などが強調されました。
カンクン宣言の内容

2016年のカンクン宣言に盛り込まれた主な内容は、生物多様性を関連分野の政策・計画・実施に統合することを通じて、愛知目標の達成と持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を図ることにあります。
カンクン宣言が重視する主な行動分野
- 農業分野における生物多様性の保全と持続可能な利用の統合
- 林業における持続可能な森林管理と生態系の保全
- 漁業・水産養殖における生態系アプローチの推進
- 観光分野における生物多様性への配慮と持続可能な利用
- 関連する法制度・政策・予算の整備と、関係省庁間の連携強化
- 先住民および地域コミュニティの伝統的知識の尊重と参加の促進
これらの行動は、生物多様性の損失という地球規模の課題に対し、環境分野のみならず経済・社会の各セクターが協調して取り組むべきであることを明確に示した点に特徴があります。
カンクン宣言の重要性

カンクン宣言の重要性は、生物多様性の主流化という考え方を国際的に明確に打ち出した点にあります。従来、生物多様性の保全は環境政策の枠内で議論されることが多かったのに対し、本宣言は農業・林業・漁業・観光といった経済セクターの政策決定プロセスに生物多様性を組み込む必要性を強調しました。
また、生物多様性が食料・水・気候調整など多様な生態系サービスを通じて人々の生活と経済を支えているという認識を再確認し、その損失が経済や社会にも深刻な影響を及ぼすことを国際社会に示したことも重要です。さらに、各国が具体的行動を約束する形で採択されたことから、愛知目標の後半期(2016~2020年)の実施や、その後の昆明・モントリオール生物多様性枠組への議論にもつながる指針となりました。
カンクン宣言の実施状況

カンクン宣言の採択後、各国は生物多様性国家戦略・行動計画(NBSAP)への主流化の視点の反映や、関連セクターでの政策統合に取り組んできました。日本でも、農林水産業や観光分野における生物多様性配慮の取り組みが進められています。
一方で、2020年を期限とする愛知目標については、全20目標のうち完全に達成されたものはなく、生物多様性の損失は依然として続いているのが現状です。この状況を受け、2022年にカナダ・モントリオールで開催された生物多様性条約COP15では、新たな世界目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに生物多様性の損失を止めて回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現が国際的な目標となりました。
気候変動分野でも、カンクン合意の後、2015年に採択されたパリ協定によって「産業革命前からの気温上昇を2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求する」という長期目標が共有され、各国による取り組みが進められています。カンクンで採択されたこれらの宣言・合意は、今日の国際的な環境政策の礎として重要な役割を果たし続けています。


