廃棄物埋立処分権取引スキームとは?

環境に関する用語『廃棄物埋立処分権取引スキーム(英国)』について教えてください。

地球環境の専門家
廃棄物埋立処分権取引スキームは、英国で実施されている制度で、廃棄物の埋立処分を抑制することを目的としています。

具体的な仕組みはどのようなものですか?

地球環境の専門家
市町村などの廃棄物処理当局に、埋立処分できる廃棄物の総量を定めた「アラウアンス(排出枠)」を割り当て、当局間でのアラウアンスの取引を認めています。また、アラウアンスの全体量を徐々に削減していくことで、埋立処分される廃棄物の総量を抑制しています。
廃棄物埋立処分権取引スキーム【英国】とは。
「廃棄物埋立処分権取引スキーム(Landfill Allowances Trading Scheme:LATS)」とは、英国国内で埋立処分される廃棄物の総量を制御するための制度です。この制度では、市町村などの廃棄物処理当局に、埋立処分できる廃棄物の「排出枠(アラウアンス)」を割り当てます。当局間では排出枠の取引が認められており、排出枠の全体量は徐々に削減されていきます。本制度は「2003年廃棄物・排出量取引法」に基づき、2005年4月から実施されました。
概要

廃棄物埋立処分権取引スキームは、英国において、生分解性自治体廃棄物(BMW:Biodegradable Municipal Waste)の埋立処分量を削減することを目的に導入された制度です。EUの「埋立指令(Landfill Directive)」に基づく削減義務を達成するために設計されており、各廃棄物処理当局(自治体)に、年度ごとに埋立処分できる廃棄物の上限であるアラウアンス(排出枠)を割り当て、当局間でアラウアンスを売買・移転できる仕組みを採用しています。
この制度の主な特徴は次のとおりです。
市場メカニズムを活用しつつ、廃棄物の埋立処分量を計画的に抑制する仕組みであり、以下のような利点があります。
- 廃棄物処理当局は、削減目標を効率的に達成するため、余剰アラウアンスを売却したり、不足分を購入したりできる。
- アラウアンスの総量を毎年削減することで、英国全体としての埋立処分量を着実に減らしていける。
- リサイクルや堆肥化などの代替処理を促進するインセンティブとなる。
一方で、アラウアンスの取引価格の変動や、行政当局間で削減能力に差が生じることなど、運用上の課題も指摘されてきました。
目的

廃棄物埋立処分権取引スキームは、埋立処分される生分解性自治体廃棄物の量を段階的に削減することを主な目的として導入された制度です。EUの埋立指令に基づき、英国は1995年比で生分解性廃棄物の埋立量を一定割合まで削減する義務を負っており、その達成手段として本スキームが整備されました。
各廃棄物処理当局には削減目標が設定され、目標を超過して埋立処分を行った場合には罰則金(ペナルティ)が科されます。この仕組みにより、埋立量の削減だけでなく、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、リサイクル、堆肥化など代替処理の促進も同時に進めることが意図されています。
仕組み

廃棄物埋立処分権取引スキームの基本的な仕組みは、アラウアンス(埋立処分の権利)の発行・割り当て・取引・償却から成り立っています。アラウアンスとは、一定期間内に一定量の生分解性自治体廃棄物を埋立処分できる権利を表す単位です。
具体的な流れは次のとおりです。まず、英国政府(環境・食料・農村地域省:Defra)が、各廃棄物処理当局に対して年度ごとのアラウアンスを割り当てます。各当局は、自らの埋立処分量に応じて必要なアラウアンスを保有しなければならず、余剰がある場合は他の当局に売却し、不足する場合は他の当局から購入することができます。さらに、将来年度のアラウアンスを前倒しで使用する「ボロー(borrow)」、未使用分を翌年度以降に持ち越す「バンク(bank)」といった柔軟な運用も認められていました。
各年度の終了後、当局は実際に埋立処分した量に相当するアラウアンスを償却(提出)する必要があり、不足した場合には罰則金が科されます。この仕組みにより、市場原理を通じて全体として最も低コストで埋立量の削減を達成することが目指されました。
排出枠の割り当て

排出枠(アラウアンス)の割り当ては、廃棄物埋立処分権取引スキームの中核となる要素です。各廃棄物処理当局には、年間に埋立処分できる生分解性自治体廃棄物の上限量がアラウアンスとして割り当てられます。
割り当て量は、過去の埋立実績や人口、削減目標などを考慮して決定され、英国全体のアラウアンス総量はEUの埋立指令で定められた削減スケジュール(2010年、2013年、2020年の各目標年)に沿って段階的に減らされていきます。当局はアラウアンスを超えて埋立処分することはできず、超過する場合は他の当局からアラウアンスを購入するか、リサイクルや代替処理を増やして埋立量を抑える必要があります。超過分には1トンあたり150ポンドの罰則金が科されました。
実際の利用価値

廃棄物埋立処分権取引スキームの実際の利用価値は、各廃棄物処理当局が地域ごとの事情に応じて、より効率的かつ持続可能な廃棄物管理を実現できる点にあります。アラウアンスの売買が可能なため、削減対策が進んでいる当局は余剰枠を他の当局に売却して収益を得ることができ、対策が遅れている当局は枠を購入して時間的猶予を確保しつつ、その間にリサイクル施設の整備などを進めることができます。
このようにスキーム全体として、埋立処分量の確実な削減と地域間のコスト最適化を両立させる役割を果たしました。実際、英国では本スキームの導入以降、生分解性自治体廃棄物の埋立量が大きく減少し、EU埋立指令の中間目標を達成するなど、一定の成果を上げました。なお、本スキームはイングランドにおいては2013年に終了し、その後は埋立税(Landfill Tax)などの政策手段により埋立削減が継続されています。


