第三国専門家派遣とは?開発途上国支援の仕組み

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第三国専門家派遣とは?開発途上国支援の仕組み

『第三国専門家派遣』について教えてください。

地球環境の専門家

『第三国専門家派遣』とは、ある開発途上国で経験や技術を蓄積した人材を、支援対象となる別の開発途上国へ専門家として派遣する仕組みのことです。

なぜ日本ではなく、他の開発途上国から専門家を呼ぶのですか?

地球環境の専門家

似た気候や発展段階を経験した国の知見のほうが現地に適合しやすく、渡航費なども抑えられるからです。こうした途上国どうしの協力を日本が支える形は『三角協力』と呼ばれます。

第三国専門家派遣とは。

環境・国際協力に関する用語「第三国専門家派遣」とは、ある開発途上国で経験や技術を蓄積した専門家・人材を、支援対象となる別の開発途上国へ派遣する国際協力の仕組みを指します。外務省の開発協力白書用語集では、技術協力を効果的に実施するため、協力対象の途上国に他の途上国から専門家を派遣する事業と説明されています。

日本では、国際協力機構(JICA)が実施する技術協力のうち「専門家派遣」の一形態として行われており、開発途上国の人材を専門家として他の途上国へ派遣・活用する制度として1994年度(平成6年度)から予算化されました。派遣は受入国からの要請に基づいて実施され、旅費や滞在費はJICAなどの援助機関を通じて負担されるのが一般的です。

実務上、次のような使われ方があります。
  • 補完・支援型:日本の技術協力を補完・支援するために、第三国の専門家が派遣されるもの。日本人専門家が中心となって進める技術協力に、現地の事情に詳しい第三国の専門家が加わって指導体制を補強するケース。
  • 普及発展型:これまで日本の技術協力を受けてきた国のカウンターパート(現地の担当者)が、技術移転によって修得した知見・技術・ノウハウを、周辺の他の開発途上国へさらに移転するために派遣されるケース。

第三国専門家派遣の目的とは?

第三国専門家派遣の目的とは?

第三国専門家派遣の目的は、途上国どうしの協力(南南協力)を活用して、受入国の課題解決と人材育成をより効果的に進めることにあります。

一般的な技術協力では日本から専門家を派遣しますが、課題によっては、同じような気候・産業構造・制度環境を経験してきた国の知見のほうが、そのまま現地に適用しやすい場合があります。そこで、すでに一定の技術を蓄積した途上国の人材を専門家として派遣し、受入国のカウンターパートに直接指導・助言を行うことで、その国が自らの力で発展していく基盤づくりを支援します。

同時に、派遣する側の国にとっても、蓄積した技術を他国へ移転する経験を通じて、地域の中核的な担い手として成長する機会となります。このように、途上国間の南南協力を先進国や国際機関が資金・技術の両面から支える枠組みを三角協力と呼び、日本はその担い手のひとつとして位置づけられています。

技術協力における専門家派遣の位置づけ

技術協力における専門家派遣の位置づけ

第三国専門家派遣は、日本の技術協力に含まれるさまざまな人材派遣の仕組みのひとつです。開発途上国へ人材を送り出す主な事業には、次のようなものがあります。

開発途上国へ人材を派遣する主な事業は次のとおりです。
  • 技術協力専門家(JICA専門家):日本から開発途上国へ派遣され、相手国の行政官や技術者に技術や知識を移転する専門家。
  • 第三国専門家:他の開発途上国から、協力対象国へ派遣される専門家。
  • JICA海外協力隊:JICAのボランティア事業として派遣され、現地の人々とともに活動する人材。2018年秋募集から青年海外協力隊やシニア海外ボランティアなどを統合し、現在の名称になりました。
  • 民間連携による人材派遣:民間企業のノウハウを活かす事業(中小企業・SDGsビジネス支援事業など)を通じて派遣される人材。

これらの人材は、農業、教育、医療、インフラ整備、環境保全など、開発途上国のニーズに応じた幅広い分野で活動しており、各国の発展と国際協力の推進に役割を果たしています。

第三国専門家派遣のメリット

第三国専門家派遣のメリット

最大のメリットは、気候風土や社会条件、発展段階における共通点を持つ国の専門家が支援に当たることで、現地の実情に即した助言ができ、受入国への技術定着が進みやすい点にあります。派遣される専門家はエンジニア、農業指導者、医師、教師など多岐にわたり、それぞれの分野で現地の専門家やカウンターパートに技術や知識を伝えます。

第二に、費用面の利点があります。先進国から専門家を派遣する場合と比べ、旅費・人件費などのコストを抑えられるため、限られた資金でより多くの人材育成を実現できます。とくに仏語圏アフリカやスペイン語圏中南米のように言語が共通する地域では、通訳を介さずに指導できることから、この利点はいっそう大きくなります。

こうした費用対効果の高さから、国際社会でも南南協力・三角協力への注目は高まっており、2019年にアルゼンチンで開催された国連南南協力ハイレベル会合(BAPA+40)でも、その一層の推進が確認されています。

第三国専門家派遣の課題

第三国専門家派遣の課題

持続可能な開発に資する有効な仕組みである一方、運用面の課題も少なくありません。

主な課題は、次の2点です。

第一に、派遣される専門家の質と人材層の確保です。開発途上国では各分野の専門家自体が不足しており、自国での業務を離れて長期間派遣できる人材は限られます。派遣される専門家には、現地のニーズに合致したスキルと経験に加え、派遣先の文化や慣習を理解し現地の人々と協働できる能力が求められます。

第二に、受入国のニーズに合致した支援の実施です。「同じ途上国だから事情が近い」とは限らず、制度や行政能力は国ごとに大きく異なります。専門家は現地の課題を正確に把握し、それに即した支援を提供しなければなりません。あわせて、現地のカウンターパートと協力しながら事業を円滑に進めるマネジメント能力も重要となります。

さらに、派遣元・受入国・日本の三者が関わるため、要請から派遣までの調整に手間と時間がかかりやすい点も指摘されます。これらの課題を克服することで、その効果をさらに高めることができると考えられます。

三角協力の事例(第三国専門家派遣に隣接するテーマ)

三角協力の事例(第三国専門家派遣に隣接するテーマ)

第三国研修を中心とする三角協力の代表例としてしばしば紹介されるのが、モロッコの取り組みです。外務省の資料では、日本の無償資金協力によって「道路維持管理研修センター(道路建設・保守管理のための施設:CIFR)」が整備され、技術協力によってモロッコへの指導が行われた結果、現在ではモロッコが周辺アフリカ諸国の技術者を招いて研修を実施している、と紹介されています。日本の支援を受けて力をつけた国が、今度は他の途上国を支える側に回るという流れは、三角協力が目指す姿を端的に示しています。本事例においては、近年、第三国専門家派遣も組み合わせ南南協力を進めています。

このように、かつて援助を受けた国が地域の拠点となり、専門家の派遣や研修の受け入れを通じて周辺国を支援する事例は、アジア・中南米・アフリカの各地域で広がっています。受入国の経済・社会の発展を後押しする有効な手段として、今後ますます重要性を高めていくと考えられます。

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