閣議アセスとは?~環境アセスメントの変遷や内容を解説~

先生、「閣議アセス(国レベルの大規模事業を対象とする環境アセスメントの実施が1984年に閣議決定され、環境アセスメントの要綱「環境影響評価の実施について」が作成されました。これに基づく環境アセスメントを、通称、閣議アセスと呼びます。閣議アセスに基づく環境アセスメントは、「環境影響評価法」が全面施行された1999年6月まで実施され、案件は448件に及びました。)」とはどういう意味ですか?

地球環境の専門家
閣議アセスとは、1984年に閣議で決められた、国レベルの大規模事業に対する環境アセスメントの仕組みのことです。

なるほど、「環境影響評価の実施について」という要綱に基づいているのですね。

地球環境の専門家
そうです。閣議アセスは、1999年に環境影響評価法が施行されるまで実施されていました。その間、448件の案件が対象となりました。
閣議アセスとは。
1984年、国レベルの大きな事業を対象とした環境アセスメントの実施について、閣議決定がなされました。これを受けて、「環境影響評価の実施について」という環境アセスメントの実施要綱が作成されました。この要綱に基づいて行う環境アセスメントは、「閣議アセス」と呼ばれています。閣議アセスは、1999年に「環境影響評価法」が全面施行されるまで実施され、その間に対象となった事業は全部で448件となりました。
閣議アセスとは

閣議アセスとは、1984年8月に閣議決定された「環境影響評価の実施について」(実施要綱)に基づいて行われた、国レベルの大規模事業を対象とする環境アセスメント制度のことです。
当時の日本では、環境アセスメントを義務付ける統一的な法律が存在しなかったため、閣議決定という形で行政上のルールを定め、国が関与する大規模な公共事業や民間事業について、事業者に環境への影響の調査・予測・評価を求める仕組みとして運用されました。
閣議アセスでは、対象事業が環境に与える影響について、調査・予測・評価を行い、必要な環境保全措置を検討することが定められていました。対象となったのは、道路、ダム、空港、発電所、埋立てなど、規模が大きく環境への影響が大きいと考えられる事業です。
閣議アセス導入の背景

1970年代以降、日本では公害問題や大規模開発に伴う環境破壊が社会問題化し、事業の実施前に環境への影響を評価する仕組みの必要性が高まっていました。
政府は1981年に「環境影響評価法案」を国会に提出しましたが、産業界などからの反発もあって審議は難航し、1983年に廃案となりました。この間にも環境アセスメントを求める世論や国際的な動向は強まっており、法律によらない形で何らかの統一的なルールを整備する必要に迫られていました。
こうした背景のもと、1984年8月28日に「環境影響評価の実施について」が閣議決定され、国の機関が実施・許認可・補助等を行う大規模事業を対象に、行政上のルールとして環境アセスメントを実施することとなりました。これが閣議アセスの始まりです。
閣議アセスの導入は、法律による義務付けには至らなかったものの、国レベルで統一的に環境アセスメントを行う枠組みを整えた点で重要な意義を持ち、後の環境影響評価法(1997年制定、1999年全面施行)の基盤となりました。
閣議アセスの手続き

閣議アセスの手続きは、おおむね次のような流れで進められました。
まず、事業者が対象事業について環境への影響を調査・予測・評価し、その結果を環境影響評価準備書としてとりまとめます。準備書は、関係する都道府県知事や市町村長、地域住民に縦覧・公告され、意見を聴取する手続きが行われます。
事業者は、寄せられた意見を踏まえて準備書を見直し、環境影響評価書を作成します。評価書は、事業を許認可する行政機関や環境庁長官(当時)に送付され、環境庁長官は環境保全の観点から必要に応じて意見を述べることとされていました。
最終的に、許認可権者は評価書の内容と環境庁長官の意見を踏まえて事業の許認可等を判断する仕組みとなっており、評価結果を行政意思決定に反映させることが目的とされました。
閣議アセスと環境影響評価法

閣議アセスは、法律ではなく閣議決定に基づく行政上の運用であったため、対象事業の範囲や手続きの透明性、住民参加の在り方などに限界があるとの指摘もありました。1990年代に入り、リオ地球サミット(1992年)を契機とした国際的な環境アセスメント制度の進展も踏まえ、日本でも法律による制度化が再び議論されるようになります。
その結果、1997年6月に環境影響評価法が制定され、1999年6月に全面施行されました。これに伴い、閣議アセスはその役割を終えました。閣議アセスが実施されていた1984年から1999年までの間に、対象となった事業は448件に及び、その経験は環境影響評価法に基づく現在のアセスメント制度に引き継がれています。
環境影響評価法は、閣議アセスと比べて以下のような点で制度的に強化されました。スクリーニング(個別判断による対象事業の絞り込み)やスコーピング(評価項目・方法の検討)の手続きが導入されたこと、住民等の意見聴取の機会が拡充されたこと、そして法律に基づく義務付けにより、事業者・行政の責任が明確化されたことなどが挙げられます。
閣議アセスの今後の課題

閣議アセス自体は1999年に環境影響評価法へと役割を引き継ぎ、現在は実施されていません。しかし、その経験から得られた課題は、現在の環境アセスメント制度にも引き継がれ、改善のテーマとなっています。
具体的には、以下のような課題があり、現行制度においても継続的な改善が求められています。
- アセス対象事業の見直しと手続きの効率化:対象事業の選定基準を明確化し、影響の小さい事業については手続きを簡素化・迅速化する。
- アセス実施体制の強化:評価を担う機関や担当者の専門性を高めるとともに、必要な人員・予算を確保する。
- 環境影響評価情報の公開・住民参加の促進:評価情報を広く公開し、事業実施者や住民が環境影響評価に関与しやすい仕組みを整える。
- 事後調査・モニタリングの強化:事業実施後に環境への影響が想定通りかをモニタリングし、必要に応じて対策の見直しを行う。
- 戦略的環境アセスメント(SEA)の充実:個別事業のみならず、上位の計画・政策段階での環境配慮を強化する。
閣議アセスは、日本における環境アセスメント制度の出発点として大きな役割を果たしました。その理念と実務経験は、現在の環境影響評価法に基づく制度へと受け継がれ、持続可能な社会づくりに向けた基盤となっています。


