地球温暖化と並行して進む「海洋酸性化」とは?

海洋酸性化が起きている原因は何ですか?

地球環境の専門家
海洋酸性化が起きている主な原因は、人間の活動によって大気中に排出されている二酸化炭素です。大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、その一部が海水に溶け込み、弱酸性の炭酸が生じます。この反応により海水のpHが低下し、酸性化が進行します。なお、海水温が上昇すると気体としての二酸化炭素の溶解度自体はむしろ下がりますが、大気中の二酸化炭素濃度そのものが増え続けているため、海洋全体としての吸収量は増加し、酸性化が進むという構図になっています。

海洋酸性化は海洋生物にどのような影響を与えていますか?

地球環境の専門家
海洋酸性化は、海洋生物にさまざまな悪影響を及ぼしています。例えば、サンゴ礁の成長が阻害され、海水温の上昇による白化からの回復が遅れたり、死滅につながるリスクが高まります。サンゴ礁は多くの海洋生物にとって重要な生息地であるため、その被害は海洋生態系全体に波及します。また、貝類やウニなど炭酸カルシウムの殻や骨格を持つ生物は、酸性化した海水中では殻を形成しにくくなり、既にある殻も溶けやすくなります。貝殻は身を守るための重要な器官であり、その形成が妨げられると、捕食者から身を守ることも難しくなります。
海洋酸性化とは。
「海洋酸性化」とは、海水のpHが継続的に低下していく現象を指す環境用語です。陸からの淡水の影響を受けにくい外洋の海水は、通常pH8.1前後の弱アルカリ性を保っていますが、大気中の二酸化炭素濃度が高まると、その一部が海水に溶け込んで弱酸性の炭酸が生じ、pHが徐々に低下していきます。これは、大気中の他の気体と二酸化炭素の分圧の差に応じて気体が溶け込むというヘンリーの法則に基づく現象です。
海洋酸性化の原因

地球温暖化と並行して進行する海洋酸性化は、地球規模の深刻な問題であり、その主な原因は人間活動によって排出された二酸化炭素(CO₂)の増加にあります。
大気中に蓄積されたCO₂の一部が海水に溶け込むと、まず炭酸(H₂CO₃)が生じ、これが水素イオン(H⁺)と炭酸水素イオン(HCO₃⁻)に解離します。増えた水素イオンの一部は海水中にもとから存在する炭酸イオン(CO₃²⁻)と結びつくため、炭酸イオン濃度は減少し、同時に水素イオン濃度の上昇によってpHも低下していきます。産業革命以降、化石燃料の燃焼や森林減少に伴うCO₂排出量の増大が、このプロセスを加速させてきました。
海洋酸性化の影響

海水のpH低下にともなって炭酸イオン濃度が減少すると、貝類やサンゴ、ウニ、円石藻などのプランクトンといった炭酸カルシウムの殻や骨格を持つ生物は、それらを形成しにくくなり、既にある殻も溶けやすくなります。その結果、サンゴ礁が海水温の上昇による白化から回復しにくくなったり、貝類の殻の溶解、ウニの成長阻害などが懸念されています。
また、海洋酸性化は海洋生物の行動にも影響を及ぼします。酸性化が進んだ海水中では、魚類の嗅覚や聴覚などの感覚機能が鈍り、捕食者を察知して身を守る能力が低下することが、近年の研究で指摘されています(ただし、この魚類の感覚機能への影響については、近年の検証実験の結果などから、再現性の有無について研究者たちの間で現在も議論が続いています)。
さらに、影響は海洋食物連鎖全体にも波及します。生態系の基盤となる貝類・サンゴ・プランクトンが減少すると、それらを餌とする魚類の数も減り、海洋の生産性全体が低下して生物量がさらに減るという悪循環を招く恐れがあります。
海洋酸性化の対策

海洋酸性化の根本原因は大気中の二酸化炭素(CO₂)濃度の上昇にあるため、最も重要な対策は排出量そのものを削減することです。具体的には、再生可能エネルギーの普及、省エネルギー化の推進、エネルギー効率の高い産業・交通システムへの転換などが求められます。
同時に、すでに進みつつある酸性化の影響を軽減する適応策も欠かせません。サンゴ礁の保全・移植、沿岸生態系(マングローブや藻場など)の保護、漁業資源の持続的な管理、海洋保護区の拡大などが代表例です。とりわけサンゴ礁は海洋生物の重要な生息地であり水産資源の宝庫でもあるため、その消失は生物の減少や水産資源の枯渇にも直結しかねません。
このように、根本原因に対応する二酸化炭素の排出削減(緩和策)と、影響を抑える適応策を両輪で進めることが、海洋酸性化対策の基本となります。
海洋酸性化に関する国際協定

海洋酸性化は一国の努力だけで解決できる問題ではなく、国際的な枠組みに基づく協調的な取り組みが不可欠です。
2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えることを目標としており、温室効果ガスの排出削減を通じて、酸性化の根本原因である大気中のCO₂濃度の抑制が目指されています。また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標14「海の豊かさを守ろう」では、ターゲット14.3として「あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する」ことが明記されています。
さらに、観測データや科学的知見を国際的に共有する仕組みとして、世界各国の研究機関が参加する全球海洋酸性化観測ネットワーク(GOA-ON: Global Ocean Acidification Observing Network)が運営されており、酸性化の進行状況のモニタリングや影響評価、対策立案のための基盤づくりが進められています。
こうした国際的な枠組みのもとで、進行状況の監視、影響軽減策の実施、国際協力の強化を各国が連携して進めることが、問題解決に向けた欠かせない一歩となります。
海洋酸性化の最新動向

大気中の二酸化炭素(CO₂)濃度の上昇が続くなか、海洋の酸性化も着実に進行しています。産業革命以降、海洋表層の平均pHは約0.1低下したと報告されており、これは水素イオン濃度に換算すると約30%の増加に相当します。海洋酸性化は、地球温暖化と関連した重大な環境問題のひとつとして、近年ますます注目されています。
生物への影響も顕在化しつつあります。サンゴ礁では海水温の上昇と酸性化が同時に作用して白化が進み、二枚貝や円石藻などの石灰化生物も、酸性化した海水中では生育が困難になりつつあることが観測されています。こうした影響が食物連鎖を通じて広がれば、漁業資源の減少を招き、人間社会の食料安全保障にも影響を及ぼしかねません。
進行を食い止めるためには、CO₂排出量の大幅な削減が急務です。再生可能エネルギーの利用拡大や省エネルギーの推進に加え、酸性化の影響を軽減するための観測・研究開発や沿岸生態系の保全といった適応策を、並行して進めることが求められています。


