ボローイングとは?温室効果ガス削減の数値目標に影響を与える仕組みを解説

『ボローイング(温室効果ガス削減の数値目標を達成できない国が、次の約束期間の削減分の一部を前借して達成とみなすメカニズム。京都議定書では採用されなかった。)』について教えて下さい。

地球環境の専門家
『ボローイング』とは、温室効果ガス削減の数値目標を達成できなかった国が、次の約束期間の削減分の一部を前借りして達成とみなすメカニズムを指します。つまり、1期目の目標を達成できなかった場合、2期目の目標から前借りして1期目の達成とみなし、2期目の目標は前借り分を差し引いた量となる仕組みのことです。

では、なぜ『ボローイング』は京都議定書では採用されなかったのでしょうか?

地球環境の専門家
『ボローイング』が京都議定書で採用されなかった理由は、環境保全の観点から問題があると考えられたためです。前借りして達成とみなすことで、実際の削減努力が不十分になり、結果的に温室効果ガスの排出量が増加してしまう可能性があるからです。
ボローイングとは。
「ボローイング」とは、環境用語の一つです。温室効果ガス削減の数値目標を達成できない国が、次の約束期間の削減分の一部を前借りして達成とみなすメカニズムを指します。京都議定書では、この「ボローイング」は採用されませんでした。
ボローイングとは何か?

ボローイング(Borrowing)とは、ある約束期間において温室効果ガス削減の数値目標を達成できない国が、次の約束期間の削減枠の一部を「前借り」して当期の達成とみなす仕組みです。これは京都議定書の交渉過程で議論された柔軟性措置のひとつですが、最終的には採用されませんでした。ボローイングを認めると、現在の削減努力が先送りされ、結果的に温室効果ガスの排出削減が遅れる懸念があったためです。一方で、短期的に目標達成が困難な国にとっては、柔軟な対応を可能にする手段としても議論されてきました。
ボローイングの仕組みは?

ボローイングは、ある約束期間の排出削減目標が達成できない場合に、次の約束期間で達成すべき削減量の一部を前借りし、当期の目標達成に充てる仕組みです。例えば、第1約束期間で目標を達成できなかった国が、第2約束期間の削減枠から一定量を前借りして第1期の達成とみなし、第2期の目標はその前借り分を差し引いた、より厳しい目標となります。
この仕組みは、短期的には目標達成を容易にする一方、長期的な排出削減を遅らせるリスクがあります。前借り分を返済する必要があるため、次期の削減負担は重くなり、その結果、削減そのものが先送りされてしまう懸念が指摘されてきました。こうした理由から、ボローイングは京都議定書では採用されず、環境保全上望ましくない手法とみなされています。
ボローイングのメリットとデメリット

ボローイングは、温室効果ガス削減目標の設定や達成にさまざまな影響を与える可能性があります。主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット
- 短期的な削減目標を達成しやすくなる:次期の削減枠を前借りすることで、当期の目標達成が容易になります。
- 削減コストの平準化:技術開発や設備投資の進展を待ってから削減を進めることで、コスト効率を高められる可能性があります。
- 柔軟な政策対応が可能になる:経済情勢や災害など、予期せぬ事態にも柔軟に対応できます。
デメリット
- 実質的な削減が先送りされる:当期の削減努力が不十分なまま、目標達成とみなされる恐れがあります。
- 次期の負担が重くなる:前借り分を返済する必要があるため、次の約束期間の目標がより厳しくなります。
- 公平性を欠く可能性がある:着実に削減を進める国と、前借りに頼る国との間で不公平が生じる懸念があります。
ボローイングの議論と他の柔軟性措置

ボローイングは、温室効果ガス削減の数値目標達成に影響を与える柔軟性措置のひとつとして議論されてきましたが、前述のとおり京都議定書では採用されませんでした。代わりに京都議定書では、以下のような柔軟性メカニズム(京都メカニズム)が導入されています。
- 排出量取引(ET:Emissions Trading):先進国間で排出枠を売買できる仕組み。
- 共同実施(JI:Joint Implementation):先進国同士が共同で削減プロジェクトを実施し、その削減分をクレジットとして利用できる仕組み。
- クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism):先進国が途上国で削減事業を行い、その削減分を自国の目標達成に活用できる仕組み。
- バンキング(Banking):未使用の削減枠を次の約束期間に繰り越せる仕組み。ボローイングとは逆方向の措置で、京都議定書では採用された。
このように、ボローイングは「次期からの前借り」、バンキングは「次期への繰り越し」という対照的な仕組みです。環境保全の観点から、削減を先送りするボローイングよりも、削減を前倒しできるバンキングの方が望ましいと判断されたと考えられます。
ボローイングの今後の展望

ボローイングは、温室効果ガス削減の数値目標を柔軟に運用するための一つの選択肢として議論されてきましたが、削減を先送りするリスクがあるため、京都議定書をはじめとする国際的な気候変動枠組みでは採用されてきませんでした。パリ協定以降の枠組みにおいても、各国は自国が決定する貢献(NDC)に基づいて削減目標を設定し、着実な削減実施が求められています。
気候変動への対応がますます緊急性を増すなか、削減を先送りせず、確実に進めることが国際社会の共通認識となっています。今後も、ボローイングのような前借り型の仕組みではなく、排出量取引やバンキング、技術協力などを通じた実効的な削減策の強化が重要となるでしょう。


